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持ち帰ったキャラで雑談 その二

301禊雨・下:2008/05/13(火) 23:41:40
 妹紅は反応できなかった。
 油断があったのは事実だろう。
 それは代理人が自分を急襲するわけがないという甘えと、
そもそも代理人が自分を急襲できるわけがないという自負から来ていた。
 ――だが、それだけではない。
 妹紅は『自分の体が吹っ飛ばされる』まで、代理人を知覚することが出来なかった。
「な……っ」
 吹っ飛ばされたと言っても、威力はほとんどなかった。
妹紅の体が抵抗を示すより早く衝撃が伝わったため、思いのほか体が跳ねただけだ。
 逆に言えば、今の一撃にはそれだけの速さがあったということか。
「私の素早さはカンストよ」
 妹紅を吹っ飛ばした体勢のまま――つまりは拳を前に掲げた状態でそう告げる。
「学びなさい。あなたの唯一にして最大の敵は、その悪夢に繋がれた楔にこそあることを」
 それだけ言い放ち、代理人は再び無言で酒を呷り出した。
 妹紅は濡れた地面にぺたんと座りこんだまましばらく呆気にとられていたが、
やがて小さく「……ごめん」とだけ言うと、代理人に追従するようにグラスに酒を注ぎだした。
 そうして、辺りに静寂が戻る。

 粛々と。
 まるで彼女達の罪を身削ぐように、降りしきる雨。

「…………感想は?」
 ぽつりと。
 ここに来て初めて、代理人は少女に語りかけた。
「よくわからなかったのですが、ケンカはダメなのですよ」
「違う」
 無機質な視線が少女を睨め付ける。
「満足したかと聞いてるの」
「……何のことなのか、ボクにはちっともわからないのですよ」
 言って「にぱ〜☆」と笑う。
 代理人は今度こそ口を閉ざし、そして二度と開くことはなかった。

 沈黙の酒会は、こうして更けていく。


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