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持ち帰ったキャラで雑談 その二

300禊雨・上:2008/05/13(火) 23:40:30
 雨の降りしきる夜だった。
 音を立てるほど強くはなく、さりとて無視できるほど弱くもない。
 この雨を楽しむ風情は濡れることにあると妹紅は思う。
 傘も差さず、街灯の薄明かりに映える暗緑の森を肴にして。
 彼女達は酒を酌み交わしていた。
「お二人はここで何をしているのですか?」
 声をかけられた二人――代理人と妹紅は、共に感情の希薄な表情をしていた。
 代理人に至っては、横に一升瓶を置きながら顔色一つ変えていない。
「あなたこそ、こんなところへ何をしに? お嬢ちゃん」
 お嬢ちゃんと呼ばれたその少女は、「にぱ〜☆」と満面の笑みを浮かべ、
「楽しいことをしているなら、ボクも混ぜてほしいのですよ」
 意外そうな顔をしたのは、妹紅一人だけ。代理人は変わらず無表情にグラスを傾けている。
 その齢10歳にも満たないように見える少女がここまで一人でやってきたことも意外なら、
雨に打たれながら淡々と酒を交わす光景をまさか「楽しいこと」と評されるとも思わなかった。
 だが、子供の発想が固定観念に縛られた『大人』とは異なる感性から生まれることは知っている。
 その程度のことだろうと、妹紅は安直に考えた。
「私達にとって楽しいことが、お嬢ちゃんにとっても楽しいとは限らないよ」
 言いながらグラスを煽る。
 特に美味いとは感じなかった。
 ――気分が悪いのならなおさらだ。
「それは混ざればわかることなのですよ」
 言って、代理人の隣に座る。
 ちなみにその少女は二人と違ってきちんと傘を差していた。
もっとも、濡れた地面に腰を下ろしている時点で傘の役割など無きに等しいが。
「雨がざーざーで水たまりがぱしゃぱしゃなのです。とってもいい気持ちなのですよ」
 少女は始終ご機嫌という様子だった。
 ただの八つ当たりと知りつつも、妹紅にはそれが面白くない。
 何しろ、つい今しがたまで胸が悪くなる会話を展開していたのだ。
 そしてそれはまだ終わっていない。
「妹紅。無駄と知りつつも、もう一度だけ言うわ」
 少女の存在を完璧に無視して、代理人が口を開く。
「愚かな思索はやめなさい。そこには何の価値もない」
「価値を決めるのは私。違う?」
「違わない。だから表現を変える。
 あなたは自分の魂を貶めてでも、『この世界』の根幹に触れようと言うの?」
 妹紅の眉根がわずかに上がる。
「何も変わらない。何も叶わない。そもそもここには何もない。
 求めれば求めるほど、足掻き、醜態を晒すことになる」
「……だから私は」
「『自分の信じるものを貫くだけ』、と? なるほど、その言葉を口にするだけの強さをあなたは持ってる」
 けれど、と、
「少しは学びなさい。そのメンタリティこそが、今のあなたに一人相撲をとらせる因となっていることを」
「……るのか」
 妹紅の周囲に空気の流れが生まれる。
 周囲の温度が急激に上昇し――そして。

「わかるのかっ!! 貴様にっ!! 蓬莱人としての苦しみがっ!!!」

 怒りに燃え上がる妹紅の顔は、まるで泣いているようだった。
「この永遠の苦輪から逃れられるというのなら、私は泥をすすることさえ厭わない……!」
「…………戯れか」
 代理人が、動いた。


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