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持ち帰ったキャラで雑談 その二

294宵闇:2008/05/07(水) 23:02:19

 ――月符「ムーンライトレイ」

 文字通り夜を裂く閃光の槍。
 完全な不意打ちに、妹紅の反応は致命的なまでに遅れた。
 そして――直撃。
「……っ!」
 声は出なかった。
 ――声帯が消滅したのかもしれない。
 左半身の感覚がない。
 ――そもそもまだ存在しているのか。
 思考が徐々に鈍っていく。
 ――まさか、脳が、壊れ……

 ――「リザレクション」

 意識が戻った。
 左手を動かしてみる。五指は妹紅の思うままに従った。
 念のため頭に触れてみる。陥没している気配はない。銀の髪一本までそのままだ。
 ――完全に「復活」していた。
 こんな短期間で復活できたところを見るに、威力はさほどなかったらしい。
 おそらく突然の衝撃に脳がパニックを起こしたのだろう。
「……またお前か」
 妹紅は語りかける。突如奇襲をかけてきた相手に向かって。
「む、その声はまさか『はずれ人』?」
 声の返ってきた先に、しかし姿はない。
 ――いや、姿は『あった』。
 夜よりもさらに昏い宵闇。
 如何に目をこらしたところで決して見透かすことの出来ない深淵。
 それが声の正体だ。
「なんであなたばかりひっかかるのかしら」
 それはこっちが聞きたいと妹紅は思う。
「魚を獲るつもりがヒトデやクラゲばかりひっかかってしまう漁師の気持ちって、
 きっとこんな感じなんでしょうね」
「…そもそもお前はこんなところに『網』を張って、一体何を狙ってるわけ?」
 やや呆れ声の妹紅に対して、宵闇は応える。
「決まってるでしょ。人間よ、人間。今晩のおかず」
「一応聞くけど。ここはどこ?」
「空ね。地上200メートルくらい?」
 しばし、お互いに無言。
「……木に縁りて魚を求むとはこのことか」
「? そーなのかー」
「鬱陶しいからやめてもらえる? お前の闇は夜に紛れると区別がつかない」
「だから罠になるんじゃない」
「相手を視認できない罠に何の意味があると?」
 宵闇がかすかに蠢いた、気がする。
 正確に言えば、人為的に作られた闇の中に埋もれた姿が、だが。
 その闇は外から中を見ることが一切叶わない代わりに、中から外を見ることも一切叶わない。
 しばらく逡巡してから、闇はぽつりと、
「……そういえば、私はどうやって罠にかかったことを知ればいいのかしら?」

 ――適当に放ったのであろう先のスペルカードが偶然にも直撃したことは、妹紅にとって屈辱の極みだった。

「……木は炭に」
「え?」
「物は灰に。人は焼死体に」
 闇の奥の気配がすくみあがるのがわかる。
 妹紅の背に生える炎の双翼が、彼女の意思を反映して燃え盛る。
「――闇は、焼けば何になるのか知らん」
 光も通さない闇から一人の少女が飛び出した。
 金髪の幼い容姿に、黒のロングスカート。
 宵闇を生む妖怪――ルーミア。
 一目散に逃げ出すその背に向かって、妹紅は掲げる。
 不尽の煙を生む炎を。

 ――不死「火の鳥 -鳳翼天翔-」

 そうしてあたりに夜が戻った。
 火の鳥に貫かれた闇は、霧散して夜に溶けた。
『私は焼いてもおいしくないよーーーーーーーー!!!』と叫びながら遠ざかった声も、もう届いてこない。
 深々と嘆息。しばらくしてから、来た道を逆に辿る。

 今晩もそこには届かなかった、と思いつつ。


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