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持ち帰ったキャラで雑談 その二

284濡羽:2008/04/22(火) 23:55:34
「天狗。私のところに来てもあんたの好むスクープはないわよ」
 開口一番、彼女は宙から舞い降りた翼に牽制を加える。
「私には文という名前があるんだけど」
「知ってるわ」
 文(あや)と名乗った少女は肩を竦めて苦笑。
 ブンヤを自称するこの鴉天狗は、時折こうして誰かの前に姿を現しては
無許可かつ強硬に取材を行うことで知られている。
 またそうして収集した情報をまとめた「文々。新聞」なる報道誌は、
その遠慮容赦の少なさに反比例するように諸処で好まれている。
 だが、この巫女が文の揃える『スクープ』に興味を示すことは稀だ。
 そして関心のベクトルが合わない事象に対してとる所作は、
道端に転がる石ころを拾う動作よりも情動に欠けている。
 人間味がないとは言わない――人ならぬ身故『人間味』を定義できないというのもあるが。
 しかし少なくとも文の知る人間の多くは、そこに類似した方向性が見られるものだ。
 一切の類似を見出せない、そもそもベクトルの次元が違う存在。
 そんな人間を、文は『変わり者』と呼んでいる。
 ――無論、胸中でだが。
「今日は世間話をしに」
 意外そのものといった表情で、巫女。
「この世界はどう?」
 文の問いに、わずかに微笑。
「おかしな言い回し。世界…そうね、幻想郷と大差はないんじゃない?」
 一度区切ってから、付け足す。
「――人為的に隔絶されている、という意味では」
「さすが博麗の巫女。わかるの?」
「そんな気がするだけ」
 今しがたまで掃除に用いていた箒を、手持無沙汰にもてあそぶ。
 神社の境内に比べれば猫の額に等しい庭。掃除などする必要性さえないのだが、
それでも何となく決まった時間にこうしているのは、単なる習慣の延長である。
 ちなみにこの箒、ピンク髪の魔女所有のものを無断で使っているのだが、今のところバレてはいない。
「けどおかしな話。何故、私達はここにいるのかしら」
 博麗大結界。その名を知らぬ者は幻想郷にはいない。
 一方でその博麗の姓を持つ巫女はあっさりと、
「あんたは夢の中で何故自分がここにいるのかいちいち懊悩するの?」
 ハゲたら天狗から河童になるわよ、と付け足される。
 その理屈は文の理解を超えていたが、おそらく知る必要のないことなのだろうと判断。
 ふと、
「結界と言えば、八雲の神隠しに会ってきたわよ」
「紫に?」
 巫女の応対がその一言で激変した。
「……あんた、それを私に伝えてどうするつもり?」
「ふと思い出しただけ。あの家はお得意さんだもの」
 その言葉に含まれた真意に、巫女は気づいただろうか。
「ふん。そんな近くにいるのなら、熨し付けて送りつけてやろうかしら」
「何を?」
「紫の式をよ」
 ここにきて初めて、巫女は文をひたりと見据えた。

「言っとくけど、私はどちらにもつく気はないからね」

 これで満足? と付け足そうと思い、やめた。
 そこにはすでに文の姿はなかった。
 それこそ夢のように消えていた。


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