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持ち帰ったキャラで雑談 その二

238仰視編 ―曙光抱く摩天楼にて―:2007/12/17(月) 23:13:26
 見上げる。
 天に突き刺さらんばかりに延びる巨大な柱が、視界の一面を覆っている。
 けれど、そこにあるのは決して無機質なだけの鈍い光じゃなかった。
 光線。
 ビルの壁面を埋め尽くす透明なガラス窓が、その屈折率から全反射させた朝ぼらけの太陽光。
 空は、太陽から光を受け取りながら、太陽よりも眩しく輝いていた。
 薄く目を凝らす。

 早朝の摩天楼に人の気配はなく。
 あと数時間もすれば雑多な波に覆い尽くされるであろうその場所は、
故にこの時間だけは普段の喧噪を晴らすかのように静寂に包まれている。
 目を閉じる。
 このまま眠ってしまえればどれだけ気持ちがいいだろうか。
 思い、一時間後の惨事が即座に脳裏に浮かび、苦笑。

 日の光がわずかに上方に傾くだけで、人工物が彩る光の幻想は終わりを告げる。
 一日の、わずか十数分の間にだけ訪れる、『ツクリモノノゲンソウ』
 日常の中でそんな幻想に浸れる自分は、さて幸福か。
 あるいはそれはとてつもなく不幸なことなのかもしれない。
 幻想と対比してしまう限り、現実は俗物にまみれた凡庸な世界に過ぎない。
 それはダイヤと比較して、水晶の価値を軽んじるようなものだ。
 決して水晶に価値がないわけではないのに。

 そして、結局のところ、自分は水晶しか手に取れない。
 ダイヤは眺めることは出来ても、その手に納めることは出来ないのだ――

 さて、時間が来た様子。
 これから摩天楼の一角にその身を置き、生きるための労働が始まる。

 胸に抱いたダイヤの輝きは、従事する自分を少しは癒してくれるだろうか?


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