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持ち帰ったキャラで雑談 その二

21対峙編       4/7:2007/05/22(火) 22:06:39
「何でこんなに辛いの? 何でこんなに苦しいのよっ!
 あたしをいいようにしたいなら、そうすればいいじゃん!
 アンタが嫌いなわけじゃないのに、あたしはアンタを憎んでる。
 それがどんだけ苦しいかわかってる!?」
 彼女の顔は変わらず濡れていて。
 頬を伝うものがしたたる滴なのか、それとも別の何かなのか、判断がつかない。
「リディアがね、言ったの。あたしの怒りはどこから生まれてきてるのかって。
 ……わかってるよ、言われなくったってそんなこと。
 アンタはあたし達の気持ちを尊重してくれてんでしょ?
 あたしが――本当のあたしが気に入らない事を、アンタは強要しない。
 あたし達を自由にさせようとしてくれるのだって、ちゃんとわかってる。
 ……だけど、だけど!」
 気づくと、アーチェの顔が目の前にあった。
 宵闇の中でも目尻に溢れる輝きを覗けるほどに。
「だからって……あたしにアンタを憎ませないでよっ!!」
 ――嫌いたかったわけじゃない。
 憎みたかったわけじゃない。
 楽しければ、そう、楽しければそれでよかったのだ。
 たとえすべてが『夢』であったとしても。
 アーチェが何より許せなかったのは。

「アンタは、自分のしてることを許せないから、あたしにアンタを許させないだけじゃない!!」

 リディアと話をして、アーチェははっきりと理解した。
 彼は偽善者だ。善人ではないけれど、決して悪人でもない。
 臆病で、アーチェ達を欲望の赴くままに動かせなかっただけかもしれない。
 けれどそれは自分達を大事に思ってくれている証拠だ。
 リディアが彼を否定しないのは、彼女がそういう人間だと彼が思っているから。
 もちろん自己弁護の気持ちだってあるだろう。
 けど、何よりリディアの意思を尊重していることはアーチェにもわかった。
 それは誰よりもアーチェ自身が、リディアならきっとあのように答えるだろうと思ったから。

 だから、アーチェは彼の事が許せない。
 自分が彼を憎むのは、アーチェならそうするだろうと彼が考えているからだ。
 彼はこの状況下で『アーチェは自分を否定する』と思っている。
 それだけじゃない。
 彼は臆病で、優しい。だから自分のしてることを許さない。
 そのために、弾劾役としてアーチェを配置したのだ。

 操られてるとか、いいように動かされてるとか。
 そんなことは心底からどうでもよく。
 ただ、自分がその程度の人間とみなされているのが、純粋に気に入らなかった。


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