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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 4●

898おじさまと:2014/05/20(火) 22:44:33 ID:QBUdmwBM
「髪、少し伸びたね」
そんなどうでもいい会話をしていると、おじさまの手が伸びてきて、私の肩にかかっていた髪を掬い上げる。
親指と掌に挟まれた髪は、するすると零れ落ちた。
別に、髪を触られることに嫌悪感はない。すごく嫌がる娘もいるけど。
何が面白いのか、おじさまは、髪を掬っては零し、零しては掬ってを繰り返す。
「綺麗だね」
「別に、手入れとかテキトーだし」
―――綺麗じゃない。
なんとなく、最後の一言は口の中で止めておいた。
そして、そんな私を見て、おじさまは薄く微笑む。
最後に一度だけ髪を梳いてから、おじさまは私の頭に手を置いた。
「綺麗だよ」
私の顔を見ながらそんなことを言うおじさまに、なんて返せばいいのかわからなくて、テレビに目を向けた。
画面の向こうではバラエティからニュース番組に変わっていて、アナウンサーが真面目な顔で原稿を読み上げている。
殺人事件がどうだの、白骨死体がどうだの、暴動が、テロが。
それらは、私には一切関係のない場所で回っている。
赤の他人の中年の家に上がり込んで、ご飯を食べて、頭を撫でられて、綺麗だって言われて。
退屈だけど、幸せなのか。
そんなことも、わからない。
「ばっかみたい」
誰に向けた言葉なのかすら、私にはわからない。
唯、おじさまの掌の熱を感じて、抱えた膝に顔を埋めた。
窓の外に、まだ、雪は見えない。


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