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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 4●

6202/4:2012/09/28(金) 20:24:30 ID:???
「……で、どうしたんですか。俺と遊んで欲しいんですか?」
「なめるな。……あれ」

そう言ってちなみさんは、人の腕を上げてその先についた猫の手で指をさす。
そこは丁度、俺が枕をしまった押し入れ──の下段。あまり使ってないものを押し込んだスペースの一角に、こじんまりとした箱が閉じ込められていた。

「…七輪、ですか」

言いながら、俺はぼんやりと去年の秋を思い出す。
この七輪は親父の代から使っている年季の入った代物で、小さいころからこれを使い魚や肉、スルメ、海苔、おにぎりやパンなど色々な物を焼いて楽しんできた。
去年の秋も「消え行く日本の風景を復活させよう」と題し、庭でサンマを焼いて食べたものだ。

…そう言えば、ちなみさんと会ったのも去年の秋だっただろうか。
焼きサンマの匂いにふらふらと釣られ、庭に転がり込んできたのが最初だ。

「懐かしいですね」

そんな昔をしみじみと思い返していると、不意にかちゃ、と何かが開いたような音がする。
見ればちなみさんは器用に立って冷蔵庫を開け、中から何か細長い凶器のようなものを口に咥えた。

「それは?」
「ふぁ」

咥えたままもごもごと返事をし、俺の目の前にそれをぺいっ、と出す。
見ればそれには目があり、口があり、ヒレがある。
なんてことはない。昨日スーパーで買ってきた冷凍サンマだ。
冷たいものを咥えたせいか、ちなみさんは舌をぺっぺっと震わせていた。

「…あー、成程」

冷凍サンマと七輪。
これだけヒントを出されれば、普段鈍感と名高い俺でも何がしたいのかは容易に分かる。

「焼け、って事ですか」
「ん」

ちなみさんの簡素な答え。それに反論する理由も、特にはない。
俺は押し入れの前に屈み、七輪の入った箱を抜き出した。


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