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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 4●
459
:
2/3
:2012/04/02(月) 20:41:26 ID:???
閑話休題。
ショックから立ち直ると、俺は
「こほん、それで、何か用かね?」
と尋ねた。立ち直るのには20分ほど時間を要したが、ともかく。
「うん、それ渡しに」
先ほどと同じ姿勢で、しかしエロ本は取り上げたので普通の漫画を読みつつ、梓は答えた。顔はページから話さず、指だけで示す。その先には、不
器用な包装の包みがあった。
「……なに、これ」
「本当は、バレンタインにあげるつもりだったんだけど、間に合わなかったから今日になったの」
まるで台本を読み上げるかのように淡々とした梓に多少の違和感を感じつつ、包装を解こうとしてはたと思い出した。
「……あの、バレンタインに貰ったケーキみたいなことはないよな』
そう、あの狂乱に満ちたバレンタイン。
渡された箱の中身は製作者曰く『チョコレートケーキ』だったはずだが、『動く』『滴る』『発火する』という、およそケーキどころか食品とは思
えない特徴を備えた異形だった。無論、インポッシブルなミッションを伝え終えたように、自動的に消し炭になったケーキを食べられるわけもなく。
「あ、あれは、ちょっと失敗しただけだよ!」
「ちょっと……だと?」
あれが『ちょっとした失敗』なら、アメリカ大統領が間違って核ミサイル発射しても『けっこうな失敗』で済むだろう。
戦慄を禁じえない俺に、梓はマンガを放り出し、焦ったように続けた。
「それに説明したじゃん。『動く』のはケーキ内で発生した炭酸ガスの圧力のせいで、『滴る』のは単に生焼けだっただけで、『発火した』のは食用
油が酸化して熱を帯びたわけで」
「そこじゃねぇんだよ、説明が欲しいのは!」
「もー、いいじゃん! 代わりにこれ用意したんだからね。今度は食べ物じゃないから!」
「……解ったよ」
俺はそっと包装を解いた。包装の素人くささから、これも手作りの一品だろうという予測はできたが、それがもたらす結果は予測不能だ。
やがて、中から現れたものは、細長い毛糸の塊だった。
「これは・・・・・・マフラー?」
「マフラーだよ」
とそこまで言ってから、梓は早口で付け足した。
「質問は受け付けないから……!」
見れば、顔を漫画本で覆い隠している。
質問と言えば、まぁ、確かに客観的には、お世辞にもいい出来とは言えない。編み目も不揃いだし、全体的にでこぼこに歪んでいて、オレンジ色の昆
布みたいなフォルムだった。なるほど、そっけなかったのはこれが原因というわけか。
だが! 今この場で客観的な視点がどれほどの価値があるのだろう? そんなものはドブに捨ててしまえばよろしい。
重要なのは。このマフラーが、梓が俺のために苦労して作ってくれた一品(そして勝手に動いたり鳴いたりしなさそう)であるという、その事実のみ!
俺は颯爽とマフラーを首に巻きつけると、胡坐をかいた膝をぽんぽんと叩いた。
「うむ、とりあえず梓。俺の膝に座れ」
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