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あと3話で完結ロワスレ

99Memoria Memoria -想い出を求めて- ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/02(水) 19:19:34
「く――ッ」
 だが、ブルーが呻いたのは、悪臭が原因ではない。
 ナイトメア・キャッスルへ通ずるゲートの開放と、おびただしい数で迫る異形殲滅戦にて、ブルーの魔力はほぼ枯渇している。
 ベストコンディションであれば難なく使用できる術であっても、消耗した彼にとっては大きな負担となる。
「だいじょぶか、ブルー……?」
「問題、ない。それよりも……」
 喘ぐような呼吸を繰り返すブルーを覗き込むクマに、ブルーは頷く。
 彼は額に浮かぶ不快な汗を拭い、意識して足腰に力を入れて、告げる。
「自分の心配を、していろ……ッ」
「くすくすくすくす。心配なんてしている暇、あるのかしら?」
 応じたのはクマではなく。
 背後からの、愛らしささえ感じる声だった。 
 振り返る。
 余裕の表情を崩さず宙をたゆたうベアトリーチェが、異形の手を翳す。
 瞬間、床を、天井を、壁を、柱を喰い破り、髪の毛の群れがその身を晒す。
 あらゆる平面から髪が突き出るその様子は、決して嘘のつけない愚直な虚軸<キャスト>を連想させた。

「何だよ……ッ!」
 カズマが声を絞り出す。
「何なんだよ、これはッ!! 何だってんだよッ!?」
「舞鶴蜜と共にいた貴方なら知っているでしょう?」
 そんな彼に向けて、ベアトリーチェは得意げに、
「これは壊れた万華鏡<ディレイドカレイド>の『想い出』」
 あたかも玩具を見せびらかす子供のように、
「神の悪夢を混ぜ込んで、わたしの言うことを聞かせるようにした『悪夢たる想い出』」
 罪悪感の欠片もなく、
「集めた『想い出』は、創世の生贄になるだけじゃない。わたしのために戦う武器にもなるのよッ!」
 ひたすらに嬉しそうに言ってのけた。
『想い出』を奪い、犯し、従わせ、使い潰す。
 ベアトリーチェは、そう言っているのだ。
「ベアトリーチェッ! あなたは、自分のしていることが分かっているのッ!?」
 激しい嫌悪感と拒絶感が、ヴァージニアを叫ばせる。その言葉を制するように、カズマが右手を真横に翳した。
「ああ……そうかよ。つまりそいつは、アイツじゃねェんだな」
 翳した右手を握り締める。
 わなわなと腕が震えるほどに強く。
 アルター能力により鋭くなった爪を、掌に突き立てるように、強く。
「そいつは、てめェが好き勝手にぐちゃぐちゃに引っ掻きまわしやがった、舞鶴の『想い出』だって、そう言いてェんだな」
 彼の声もまた震えていた。
 胸の内で暴れ回る激情を滲ませるように震えていた。
「もういい。分かった。てめェのやってることはよく分かった」
 そして。
「ぶっ飛ばしても物足りねェ。覚悟しろよ糞ガキ。泣いても謝っても、俺は、絶対ェに――」
 握り締めた拳を、輝かせる。
 強く激しく、憤怒を滾らせ燃やすように。
「てめェを、許さねェ――ッ!!」
 怒りを胸に。感情を右腕に。
 再度、カズマが疾走する。
「傲慢ね。貴方たちなんかに許してもらおうなどと、思っていないわ」
 吐き捨て、ベアトリーチェが指を振るう。
 応じるように、髪の群れがびくりと蠕動して。
 四方八方から、殺到した。


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