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あと3話で完結ロワスレ

78288 交錯迷宮<コンプレックス・ダンジョン> ◆MobiusZmZg:2012/12/27(木) 23:12:44
「あのときは、すごく嬉しかった。……嬉しかったんだよ。
 だってずっと、玄冬は僕に。玄冬を好きな僕に『自分を殺してくれ』って、そればかり言ってたんだもの」
 続き続いて、終わることのない嘆きに、流されないためにだろうか。
 無防備な少年へ打ち込もうにも打ち込めないテトリスは、黙して大剣の柄を握りこんだ。
 好きなものを、ただ好きだって言うためにだって、他の誰かに血を流させなきゃいけなかったんだ。
 騎士の吐息に色がつく。こんなものが分かってしまうなら。吐息についたは、呆れだった。誰を好きになりたい。
それが望みであったなら、目の前に立つこの少年が他者を裁く救世主になどなれるはずはない。
 人はすべて虜囚とも言われる百万迷宮においてさえ、他者を裁けば、その者に《敵意》が向くというのに。
「なのに、なんでだろ……」寒いね、とこぼした花白の、声は怒りに震えていた。「どうして、僕は玄冬を信じて、
一太刀受けてやれなかったのかな。それで全部が終わった。僕たちの中だけで終われたのに」
 自己嫌悪を胸に、力なく首を振る花白からは、もはや鬼気など感じ取れない。

「結局、僕が全部壊しちゃったんだ。
 あの世界にいた皆を殺そうとしなかったのは、綺麗な手で世界を掴めるのは、玄冬だけだった。
 アイツなら……ひょっとしたら『真の忍神』を殴ったあとにでも、なにか願ってくれるかもしれなかったのに」

『もったいないだろ』なんて、言いながらね。
 そうしてうそぶく花白は、いつまで経っても終わらない。
 終わればそこで玄冬を忘れるのだとばかりに、あの瞬間から動かない。
 止めどなく流れ続ける救世主の言の葉を、テトリスは途中から聴き流していた。
 世界を恨み、憎み呪って紡ぐ言で、誰より先に花白が虚しさにとらわれていると知れたからだった。
 それを分かってしまったからこそ、そんなことは、ここで終わりにしてやらなければならないとも思えた。
「ああ。そうだな。お前は、たとえ創世主になっても、平和や幸せを願えない」
「そうだね。人を殺さなくても成り立つ世界だなんて、僕には想像出来ないや」
 幸せという単語にこそ、花白は殴られたような衝撃を受けていた。
 いっとき血の臭いが消えたことに安堵すれども、少年には、その場所が楽園や――自分が育って巣立つまで
居続けられる学園だとさえ感じることが出来ないだろうと、テトリスにさえ信じられる。
 だからこそ、つかの間の息継ぎを終えて、花白は剣を構え直した。

「玄冬の剣を僕は避けた。……だから、もう他のヤツには斬られてやらないよ」
「死ぬわけにいかないってのは、ボクも同じだ。諦めを知らぬものが騎士なんだからな」

 騎士ではだめだと乙女に告げたテトリスは、だからこそ花白に名乗りをあげる。
「その様子だと、騎士なんざ嫌いなんだろうが……それで剣を振るえるなら、もう一度聞いておけ。
 ボクは『落下ダメージの』パジトノフ侯爵テトリス九世。『災厄の王子』だとも、いつか人に呼ばせてみせるさッ!」
 スキルとしての意味をなさぬ名乗りであろうとも、それはテトリスに力を与えてくれる。
 救世主が諦め、すでにして救われないと決まっている世界の果てにあってさえ、

 ともしびは、消えない。



【交錯迷宮・合咲の間 Side.B】
【「落下ダメージの」テトリス@シニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮キングダム】
[状態]:災厄の王子
[装備・所持品]:大剣@迷宮キングダム、希望の魔除け@ラストレムナント
[思考]:花白と戦い、彼を終わらせる
[備考]:血盟忍法【二人袴】を修得しています。
 血盟「影弥勒」の誰かが【感情】を抱いたとき、同じ対象に同種の【感情】を抱くことが出来ます。


【花白@花帰葬】
[状態]:【人類の敵】、右肘に擦り傷、自動回復中
[装備・所持品]:救世主の剣@花帰葬、幽命丹@シノビガミ
[思考]:この箱庭の創世主を殺す。それまでの障害になる者を殺す。諦めた者を殺す。玄冬を殺した者を殺す
[備考]:エンディング『約束』後の参戦。救世主としての力は失っていません。



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