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あと3話で完結ロワスレ
77
:
288 交錯迷宮<コンプレックス・ダンジョン>
◆MobiusZmZg
:2012/12/27(木) 23:12:24
凄絶なまでに強く、世界を憎むものが生みだした、美しさと紙一重の行き止まり――。
「違うッ!」
その滑稽を目の当たりにしたテトリスは、瞬間視界が赤く染まるほどの怒りを覚えて叫んだ。
「そうじゃない。ボクが言いたいのは、そんなコトじゃない!」
雪。『箱庭』では世界のすべてに忌まれたという、世界に近づく滅びの証。
騎士の抜いた大剣は、これまで積み重ねてた武勇を示すように、風に逃げてゆくはずのそれを断ち割る。
「ここでお話? わざわざ前後不覚になってくれるの? 僕は、別にそれでもいいけど……さッ!」
「あいにくだが、ッ、こっちの質問はひとつだよ」
騎士の乱舞に繋がる突撃を、花白は身を翻して避け、さらに大剣の横腹を蹴りつけていなした。
体幹がぶれたところに襲いかかった感覚的かつ正しい薙ぎ払いを、テトリスもまた飛び退って避ける。
「どうして、『影弥勒』じゃないお前が、加賀十也を殺した?」
「……ああ」
問いに返って来たものは、ころころと表情の変わる花白の、破顔一笑というべき顔だった。
「『真の忍神』とかいうヤツに、願いを叶えて欲しいから?
アイツがかみさまの器だとは思わないけど、うっかり横合いから取られちゃったら厄介でしょ」
けれども彼は、自分の口にした言葉をまったくと信じていない。
それだけではなく、目だけがかたくななまでに、笑っていなかった。
雪に映える髪と同じ薄紅の双眸は、ずっと敵意で満たされていた。『分断』された迷宮の最奥部。双子の部屋の
片方で、敵手を潰す最後の戦い<クライマックスフェイズ>を始めた五人の交錯から――いまこのときにおいてさえ。
「それを信じたら、お前は満足するのか」
「まさか」
気負いなく剣を携えているようでいながら、花白の表情にはひどく余裕が無い。
自分の一言一句に眉を跳ね上げるさまを見るに至って、テトリスもムラクモの考えの正しさを認めざるを得なかった。
――命の器が壊れかけているいま、世界の嘆きも最大限に高まっているはずだ。
……その、嘆きの声とやらが聞こえる『救世主』。
黒須左京の展開した交錯迷宮に干渉し、そこを銀世界に塗り替えるだけの力を扱う花白を真っ先に落とした
ならば、この盤面は一気に整理されるだろう。
「こんなので食い足りるわけなんかない。僕には、かみさまに伝えたい願いだってない」
いまにも泣きそうな顔した少年は、血の凍って貼り付いた剣を振るうこともなく、
「だけどさ。だけど……思ったよ。
どうしてアイツらは、あんなに優しいままで、相手のことを『殺す』だなんて言えたの?」
自分自身にこそ叩きつけるような声音であまく、せつなく、腐り果てるしかない思いを告げた。
その言葉がもつ意味は、息を呑んだテトリスも、『影弥勒』が一員として可能な範囲で理解していた。
《タッピング&オンエア》。迷核を起動させたダンジョンマスターでもあり、純血の雷使いである黒須左京が
『影弥勒』の面々に流していった映像は、血の匂いを思い起こせるほど鮮やかに焼き付けられている。
玄冬が、花白を殺そうとしていた。
花白は、玄冬に殺されようとしていた。
まるで、先刻の十也と左京が見せた光景のように。
ただし、彼らよりは少しく穏やかに、落ち着いて終わりを迎えようとしていたのだ。
彼らふたりの生きた箱庭において、玄冬は、救世主たる花白にしか殺せない。
魔王たる玄冬を殺したならば、命の器に嘆きが満ち、終わらぬ冬に滅ばんとする世界に四季をもたらせる。
人々が争いを繰り返し、命の器が限界に近づいて、次の玄冬や花白が生まれ巡りあうそのときまで。
だが、玄冬を裁くべきとされた今の救世主――花白は玄冬の顔を知ってしまった。
彼の優しさを、彼の拘泥を、彼の抱いた罪悪感を知って、そこにある嘆きを思ってしまった。
――なあ、花白。ふたりで……死のうか。
玄冬の、涙も流せず乾いた声が、耳に蘇るようだった。
あの青年を殺せなくなった花白にとり、あの提案は、ひどく優しいものだったのだろう。
けれどもあれは、あれを愛と呼ぶのなら、そんなものは無くなってしまえと言いたくなるような愁嘆場だった。
それでもあれは、「茸ドラゴンにでも食わせてしまえ」と言い捨てるだけでは忘れられない夢でもあった。
花白が玄冬を殺しても、なにも終わらない場所でもなければ、玄冬は花白を殺そうとしなかったであろうから。
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