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あと3話で完結ロワスレ
73
:
288 交錯迷宮<コンプレックス・ダンジョン>
◆MobiusZmZg
:2012/12/27(木) 23:10:55
「……っは、あ、ぁ……ぐぅッ」
無いはずの肋骨を開かれ、心臓に手をかけられるような、それは空白がもたらす喪失の衝撃。
問いがないところに、答えを導かんとする行いに対する裁きのような圧力が、火を操る術に練達した
修羅ノ介の手許を狂わせた。燃え移ることこそなかったが、術を解いてなお反動が激しい。
脳漿などないと知れた身体が呼吸をしても、もはや息さえすることが出来ない。
藤林修羅ノ介。
忍神に家族を奪われた、伊賀の末裔。そんなことはもう「知って」いる。
萬川集海の断章たる『六道の書』。御斎学園の生徒会長だけが持てる奥義書を求めて、六道祭と呼ばれる
魔戦に挑戦してきた『エターナル二年生』。そんなことは先ほどから、嫌になるほど「思い出して」いる。
数えて五回、生徒会長になれず、あのときもまた負けを喫した。そんな思い出は真っ先に「刻んだ」。
では、それではなにをこの身に灼いて――。
二度と忘れることのないように、焼き付けてしまいたかったというのだ。
自分の《気力》を奪おうとする無力感でなく、《希望》の対となる絶望などでもなく、
負けた記憶を手にして、次などない場所でこの武官たちに勝つための、なにを。
「絶対失敗<ファンブル>か。萬川集海との争いも、そろそろ終わりが近いようだな」
含みを帯びて艶めいた声を見上げてみれば、そこに男の憐憫があった。
見上げて、いるからだろうか。激情を抑えて深く刻まれた眉間の皺も、眼頬溝におちている翳も、秀でた
額から束をなして落ちる髪も。ムラクモの顔に影を落としているべきすべてが、双眸に浮かぶ一切を隠さない。
不死のあらわれたる瞳の赤は、いま。鋼のような印象とかけ離れて、沁み入るような光を帯びている。
そこに疲労と紙一重の憂いを見出したからこそ、修羅ノ介には、その色がいやに濡れてみえた。
「ならば、この手でヴァルハラへ送ってやる。そう言うべきなのだろうが」
開いた口から放たれた声が、明らかに耳ではない箇所を伝わって少年に届く。
しかし、いったいなにが起きて、自分は彼を見上げることになったのだろうか。仰向けに倒れ込た覚えもない
少年は、間の抜けた思考に舌打ちすることもかなわぬ状態に陥っていた。
萬川集海。自分が力の源泉としていた秘伝書が、脚と言わず腕と言わず、元の形に戻ってしまったのだ。
「――その死線を乗り越えたならば、あの女の秘蹟も目にすることがかなうだろう」
「は、ッ。やっぱそういうカラクリかよ……!」
しかして自身の望みや形を忘れてさえも、彼はムラクモの言う女の存在だけは忘れていなかった。
完全者ミュカレ。魔戦が繰り広げられた地にあって、いくたびもの転生を繰り返してきたという魔女。
乗り心地がよい身体だと、御斎学園の申し子だった少女の見目で告げられたことは鮮やかに「憶えている」。
――だけど、こいつらをどうにかするには、なにが必要……なんだっけ。
びょう、と激しさを増した風が、修羅ノ介であった秘伝書を揺らした。
流れた命のうえに止めどなく降り注ぐ六花と梅の香が、思考を白く染めあげてゆく。
かすむ意識を、今にも手放してしまいそうな自身に――より正確には自身の敗北に対する諦観は、先ほど
空白に対して覚えた恐れと紙一重の恍惚を意識に運んできた。
「……生き残りたければ祈るがいい。
希望が人に力を与え、思いが人を動かす場が迷宮なのだと言うのならな」
「その、さ。――祈りって、なんだっけ?」
転瞬、武官の漏らした失笑が、石床の上にも伝わる。
「神になにかを願うことだ。もっとも、お前の神はすでにいないが」
「なんでだよ。『忍神』とかなら、これから生まれるかもしれねぇだろ……」
ムラクモの答えを受けた少年は、彼に応じながらも、まったく別のことを考えていた。
簡単だった。まったく簡単なことだった。改めて考えるまでもなく、自分はいつもやっていたではないか。
問いの無い場に答えを見出すよりも、誰かに問いをかければ良い。
お前は誰だ。
朝が来て、目覚めるたびに、自分はその問いを発していた。
そうと問えば、必ず答えが返って来た。瀧夜叉。家族を取り戻したいと願った自分が従えていた屍人の、
無機質なくちびるの動くさまを「追憶」して、修羅ノ介は、あの儀式を思い出す。
萬川集海に自らを定義する過程を、思い出して、ここでは無理なことだとかぶりをふる。
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