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あと3話で完結ロワスレ

61reserve hunt ◆nucQuP5m3Y:2012/12/18(火) 03:22:57
先ほど、かねてからの怪我による失血が危険域に達していた石島土門が死んだ。
それによって、彼の属していた世界が消失(デスアピア)した。
彼の世界からは、多くの魔道具と呼ばれるアイテムがこのゲームのために集められていた。
それも、全て消えた。
今、扉の前で逡巡する六人も、最後に残った超常的な武器である魔道具に頼った戦略を立て、この場までやってきていたのだ。
そこに吹いた消失(デスアピア)という名の一陣の風。
風の後に、土門のことも、魔道具のことも、覚えているものは一人もいなかった。
「いっそ……全員ここで殺したら、ゲームは終わるんだよな」
「それは……!」
先ほどまでの大声から急落して、低く、小さく呟いた蝉の声に鉢かつぎが焦りを見せる。
彼女は、この中でも彼女だけは殆ど徒手空拳にて戦える実力があるが、右腕一本を失った今、蝉を止められるかどうかはわからない。
「冗談だっつーの……俺は依頼を終わらせるまでは……くそっ!!」
呟いて、蝉はまた苛立ちを顕わにする。
彼が受けた依頼。
プロの殺し屋としてのプライドにかけて何よりも優先すべき事項。
それが「主催者の抹殺」だった。
だが、思い出せない。
誰に依頼されたのか、報酬はいくらなのか、おそらく消失(デスアピア)した何者かによって、強く強く請われたその事柄について、蝉は一切の記憶がな

い。ただ漠然と「依頼だらか主催者を殺す」という思いだけが胸に渦巻いていた。
「引き返しても同じなんだろ」
ずっと口を閉ざしていた霊幻が吐き捨てる。
彼も、思い出せない大事な約束があった気がしていた。
蝉と彼だけではない。
ここにいる六人全てが、何かしらの誓いを携えてここを目指していた。
だからこそ、あれだけゲームに積極的だったハクアや恋川も同じ方向を向いているのだ。

この大きな扉を超えたら最後の戦いになる。
それだけはわかる
それ以外は、何もわからない。
「誰かわからないけど、彼を信じるしかない」
「……覚えちゃいない相手を信じろって言われてもね」
春瓶の言葉にため息をつくハクア。
「それでも、他に道はない」
「ねぇな」
霊幻の呟きに同意する恋川。
「蝉様……」
「……クソッ!」
鉢かつぎの呼びかけに対する答えの代わりに、蝉の拳が扉に叩きつけられた。
ギィ、という見た目よりもずっと軽い音が響いて、扉が開いていく。

放送のたびに空に大写しになっていた、あの生意気そうな顔が見える。
不安を入念に踵で踏み潰しながら、六人は扉の先にゆっくりと進む。
「遅ぇよ。あんな長い心理描写いらねぇんだ。クドいだろ。読者が飽きる」
ゼクレアトルが、そこにいた。


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