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あと3話で完結ロワスレ

406剣士ロワ第300話「光」:2013/03/14(木) 00:14:21
 だが、逞鍛には分かる。常闇の皇の膝下に跪き、回天の盟約を結び直属の配下となった逞鍛には、光に頼らずとも、周囲の状況がはっきりと認識できていた。
 上下左右の認識すらも曖昧になった闇の中で、天空から地獄の業雷が大地に落ち、地獄の業火が燃え盛り、氷結地獄が周囲を取り囲み、地獄の瘴気を乗せた旋風が吹き荒れる。
 それらの攻撃に反応することすらできず、3人は打ちのめされていく。
 闇の中でも頼れる聴覚や触覚を頼りに辛うじて直撃は免れていたが、防戦にすらなっておらず、一方的に甚振られているだけだった。
 今、常闇の皇が悠然と天空から大地へと降り立ち、そのまま世界を砕こうとしていることすらも気付けていない。
 目の前から光が奪われただけで、こんなにも無様な醜態を晒す。
 それが、光の戦士達の、彼らが掲げた“正義の力”の限界なのだと……認めてなるものか!
「うおおおおおお!!」
 雄叫びを上げて、逞鍛は高速戦闘形態で常闇の皇へと突貫する。
 闇の炎と氷を飛び越え、闇の颶風を振り払って飛ぶ。そして、両手に握った天刃と空刃を――兄の形見の双剣を振るい、常闇の皇へと渾身の縦一閃を放つ。
 だが、常闇の皇はその攻撃を、自身の神体である球状のカラクリを幾つも縦に分割することで回避した。
 そのままカラクリを逞鍛の体へとぶつけ、大地へと叩き落とす。
「ぐあぁぁ!」
 鎧が砕け散るほどの衝撃を受け、逞鍛は血反吐を吐きながら、しかし、天刃と空刃を手にすぐに立ち上がった。
 こんな程度で諦めてはならない、こんなことで負けてはいられないと。
「逞鍛! なにを……!」
 氷の棘に苦戦しているゼロが、逞鍛へと声を掛けて来た。
 思えば、本来なら逞鍛とゼロの間には何の因縁も無かった。
 それが、衛有吾の意志を解して通じ合い、そして同じ戦場にいる。
 衛有吾の意志、それを汲み取ったゼロの心。それらの情が結び付き、逞鍛へと届いた。
 そして、殺戮の儀式という極限の状況下でそれぞれに人の情に触れたことで、闇に堕ちながら、闇に生まれながら、変わることのできた2人の戦士の生き様が、逞鍛の心を突き動かした。
「……フッ。やっと、正気に戻った……!」
 兄が命を賭して守ろうとしていたものは、この闇の中にあるのか?
 自分が求めていた理想と正義は、この闇の中にあり得るのか?
 答えは、否。断じて否。
 天翔狩人摩亜屈が願っていたのは、逞鍛が望んでいたのは、こんな世界ではない。
 光あるが故に己とそれ以外との境界が生まれ、それ故に人は他者と他者とに分かれ、大小問わず争いや諍いの絶えず起こる世界であろうと、人は変わることができる、分かり合うことができる。
 光射す世界だからこそ、夢も、希望も、未来も、平和も意味があるのだ。
 闇だけの世界では、全てが混然一体となり、それ故に争いも諍いも一切生じない静かな世界となるだろう。
 しかしそれは、己とそれ以外のものどころか、有と無の境界すらも曖昧になってしまった、永遠の孤独の世界。
 暗黒の世界では、現実にも、絶望にも、過去にも、何もかもに意味が無い。
 そんな世界を認めるわけにはいかない。
 一度闇に屈したことを言い訳に、己が正義を棄てるわけにはいかないのだ。
 逞鍛が己の内に熱く脈打つ魂を自覚した、その時、彼方から移動する熱源が飛来した。
 その熱源は己の高熱によって光を放っており、その姿はまるで小さな太陽だった。
 逞鍛の目前に迫っていた、常闇の皇の放った無数の雷球と火球を全て受け止めて防ぎ切り、それは逞鍛の前に降り立った。
 それの名を、逞鍛は知っていた。


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