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あと3話で完結ロワスレ
398
:
剣士ロワ第300話「光」
:2013/03/13(水) 23:56:19
悲しみに打ちひしがれ、オキクルミの心は身体以上に凍えていた。自分の心に温もりを与えてくれていた、掛け替えの無い者達に先立たれてしまったが故に。
双眸から溢れる涙も、流れ出た途端に凍りついてしまうようになっていた。
このままでは、遠からずオキクルミの肉体も冷気に侵され、やがて鼓動も途絶えてしまうだろう。
そのことはオキクルミ自身も気付いていた。だが、それでも良いのではないかという考えすら、脳裏を過るようになってしまっていた。
この孤独に耐えられないほど、オキクルミにとってオイナ族の仲間達は温かかったのだ。
すると、突然、手を温かい何かが触れた。
「……アマテラス?」
体中に朱の隈取りの化粧を施した、コロポックル宿しの狼の名を呼ぶ。
双魔神と戦い、ピリカの傍らで息絶えたとばかり思っていたが、まだ生きていたのだ。
アマテラスは自分の体のことも顧みず、オキクルミを気遣い、彼の体を少しでも温めようと、指先を舐めていたのだ。
自らの命が絶えようとしているというのに、他者を気遣える底知れぬ慈愛の心。さながら、万物を照らす太陽のような温もりが、指先から伝わって来る。
すると、何を思い立ったというのか、アマテラスは鋭利な槍で貫かれたような大穴の開いた身体に鞭打って立ち上がり、絵筆の先のような尾の先を振るいだしたのだ。
「よせ、アマテラス! 無理に筆業を使えば、お前も……!」
オキクルミが止めようと声を掛ける。だが、アマテラスは以前と変わらぬ穏やかな表情で一声鳴くと、空に見事な筆を走らせた。
空に現れたのは、月。
イザナギのヤマタノオロチ討伐のその瞬間に輝いていた、あの時と同じ三日月だ。
すると、オキクルミは背中から強い力の波動を感じた。虎錠刀が三日月の光を浴びて、淡く輝き始めたのだ。
その輝きはだんだんと強さを増し、やがて、光が闇に呑まれた大地を照らし出した。
「な、なんだ!? 急に景色が……!」
虎錠刀から放たれた光に照らされた途端、オキクルミが今まで見ていた景色が姿を変えた。
現れたのは、闇に包まれた何も無い空間。地面を踏み締めているという感覚すら無い、延々と広がる闇の空間だ。
いったい、何が起きたというのか。オキクルミには、光が収まった虎錠刀を見遣るぐらいしかできなかった。
「異界の大神よ、ありがとう」
急に、声が聞こえた。聞き慣れた、もう二度と聞けると思っていなかったその声を聞いて、オキクルミは慌てて後ろを振り返った。
そこには、孫権の姿があった。
「孫権……? どうしてお前が……いや、ここはどこだ?」
思考が纏まらず、ただ口を吐いて出た、しかしそれゆえの真実の問い掛けに、孫権は徐に頷いた。
「ここは、常闇の皇が創り出した精神世界。魂だけの存在となった俺でも、ここでならこうして君に姿を見せることができるんだ」
「常闇の皇の……? …………そうだ! 戦いは終わってなどいなかったんだ! 俺は、奴の放った術に捕えられて……!」
孫権から告げられた言葉により、オキクルミは全てを思い出した。
同時に常闇の皇の絶大な力を思い知ることになり、言い知れぬ不安と恐怖で体が震える。
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