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あと3話で完結ロワスレ

387剣士ロワ第300話「光」:2013/03/13(水) 23:18:51
「まさか、“変わった”というのか……この、私が……。今の時代のデジモンが……!」
 タクティモンの生きる時代のデジタルワールドは、それまでのデジタルワールドと大きく性質を異にしている。
 それは、デジモンから『進化』が失われたこと。そして、デジモンは生まれてから一生その性質を変えることなく、正義は正義、悪は悪のままに一生を終えるというものだ。
 かつてデジモンが強く願えば自らを変えることができる種族だったという事実を知る者は、最早バグラモンとその側近であるタクティモンしかいない。
 デジタルワールドは電子的なデータを解して、人の心によって照らされて認識される宇宙――即ち、人という種の心の在り様によって法則が書き換えられる世界なのだ。
 その世界の法則に於いて、デジモンの進化とは人の夢や希望の表れだった。
 そしてデジモンから進化が失われたということは、人々の心から夢や希望が失われた――『代わり得る自分自身』を信じられなくなったということを意味する。
 即ち、絶望による諦観と虚無感によって人の心が満たされ、それに伴ってデジタルワールドも変質してしまったのだ。
 その世界で生まれたタクティモンも当然、それは変わらない。人々の心が絶望に支配され膿み腐っていく時代で、自分の可能性を心から信じられる者がどれだけいるというのだ。
 だが、現にタクティモンは“変わっていた”。切っ掛けは、疑いようも無い、トゥバン・サノオとの戦いだ。
 トゥバン・サノオが見せた、人の持つ底知れぬ可能性。今より前を、今より先を、今より上を目指す、飽くなき志。
 それを目の当たりにして、タクティモンは心を動かされたのだ。
 ただ剣を振るうことしかできない武人から、誰かの為に悲しみの涙を流せるものへと変わる程に。
 そして、バグラモン自らの手によって創造された自分が、このもう一つの巡り合いの戦争【クロスウォーズ】と呼ぶべき場所――善と悪、光と闇が相克する殺し合いの場で変われたこと。
 それが意味する所を、タクティモンは悟った。
「……陛下。貴方の大義、その奥底には……貴方の願いが眠っていたのですね。この私にも……!」
 振り返り、迸る闇の波動の根源を睨む。
 そこには、赤黒の双頭龍と見紛う程の邪悪の権化が存在していた。
 あれを倒さねば、あまねく世界の未来は闇に閉ざされ、光を失うことになるだろう。
 視線を、再びトゥバンの亡骸へと戻す。そして、その手に握られたままのイルランザーを取り去った。
 不思議と、簡単に取ることができた。まるで、トゥバンが死して尚、イルランザーにはまだ往くべき戦場があることを承知しているかのように。
「去らばだ、トゥバン・サノオ」
 別れの言葉を告げて、タクティモンは邪神の下へ――自分が往くべき戦場へと走った。
 今の自分の、心の命ずるままに。













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