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あと3話で完結ロワスレ
345
:
289話:絶望の先の希望/希望の先の絶望
◆c92qFeyVpE
:2013/02/24(日) 10:57:23
(それなのに、こういう時は頼りにしたくなる……)
都合のいい話だろう、それは理解している。
それでもそう思わざるを得ない程に、彼の持つオーラは強く人を惹きつけるのだ。
マジックは先程から口を開こうとしない、ただぼんやりとランスの死体を見つめたまま動かない。
魂の汚染、この殺し合いの中で多くの犠牲を出してきたそれはアリス一人にどうにか出来るものではなかった。
だが今この場にいるのは二人だけ、ずっと側にいた騎士はここにはいない。
一刻を争う状況でアリスの思考が回り続ける、自分が一人で彼女を助ける方法がないかを探すため。
(言葉だけでどうにかなるような代物じゃない……けど、私の魔法じゃ魂の浄化なんて……)
どれだけ思考を巡らせようと、アリスの持っている手札にこの状況を打開する手段は存在しない。
無力感が込み上げ悔しさから、唯一動く左の拳を強く握る、爪が手の平に食い込むがその程度のこと気にも――
(―――あった!)
突然顔を跳ね上げ、マジックの手を取り無理矢理開かせる、
「っ……離して! もう、何をしたって……」
「いいから、黙って見てなさい」
抵抗するマジックには取り合わず、アリスは静かに瞳を閉じて記憶を辿る。
皮肉にも「本気」を出すことを意識したせいで、自分の力のみに拘っていた。
一人だけで解決する必要はないのだ、自分の力でダメなら別の誰かを頼ればいい。
そう、七色の魔法では浄化できない魂も、彼女の魔法ならば癒すことができるはず。
あのフランドール・スカーレットさえも心を開いたという、素敵な魔法。
それは―――
「出来たわ」
「………お饅頭?」
それは、【手の平から和菓子を生み出す魔法】。
自らのカロリーを媒体として和菓子を作り出す、たったそれだけの、小さな魔法。
『この魔法はね、今はいない……ボクが大好きな人達が使う、幸せに満ちた魔法なんだ』
そう言いながら、少し寂しげに笑っていたさくらの姿を思い出す。
あの時は使い道の無いくだらない魔法だと切り捨てたが、今ならわかる。
この魔法に込められた、何よりも尊い想いを。
「マジック、食べてみて。絶望してようが食欲ぐらいあるでしょう」
「っ……」
マジックが最後にまともな食事を取ってから丸一日経過している。
どれだけ負の感情に支配されていようと、空腹感までは消せはしない。
無理矢理渡された饅頭とアリスを交互に見て、恐る恐るといった様子で口元へと運ぶ。
ぱくり、と一口噛り――
「わ、美味しい……」
絶望に染まっていた顔が、綻んだ。
これこそがこの魔法に込められた想い。
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