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あと3話で完結ロワスレ

289SLBR・289-a: 素晴らしき小さな戦争(Ⅰ) ◆MobiusZmZg:2013/02/02(土) 17:16:58
 たとえば、十也も助力していたという『日常の盾』――UGN(ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク)。
 コードウェル博士らが設立した、人類と超人<オーヴァード>の共存を目指す組織の背景も思い出せる。
 人間以上の力を持つが、人間よりも人間性を喪いやすい超人。ヒトでなくなった者たちを世界に認め受け入れさせることを
目的にしたUGNは、博士の事故死をきっかけに治安維持の機能に重点を置いたものになったのだという。
 レネゲイドが関連する事件の解決や情報の隠蔽を行う一方で、力の扱い方を知らぬ者を保護し、ウィルスがもたらす衝動を
制御する方法を教えて協力者を増やす。そうして時間を稼ぎながらウィルスを研究し――。


「UGNは、その意義を失った」


 最終的には超人をヒトに戻すことを目的としていた組織を、設立者であった男があっさりと切り捨てた。
 そればかりか、博士は人類の盾としてあった者たちすべてをこの夜を機に裏切った。オーヴァードの力を犯罪やテロに
扱う『人類の敵』に与し、みずからの手で複数のUGN支部を壊滅させたというのだ。
 記憶操作や機械への干渉をもって博士の帰還を一般社会から隠すことには成功したが、それも無駄に終わったと聞いている。
 完全者を名乗る魔女が立ち上げた『完全教団』の擁する騎士どもが、ウィルスや忍神の血といった異能に目覚めぬ「旧人類」の
肉体を破壊することで、かれらの霊的な救済を行うと全世界に向けて宣言し、実行したがゆえに。


「新たな世界のため、すべてを破壊しなければならんのだ」
 すでに途切れた映像に映っていた男の名残が、追想する過去にあった。
 コードウェル博士はUGNに向けたものと同じ調子で、自身の住まっていた世界そのものを捨てて征く。

「恐れることはない……悪しき肉体は滅び霊魂は救われる。新たなる器の完成をもって、人は次の階段を上るのだ」
 いくつか断線した映像や音声の、原因を作り出した魔女が、高らかに笑う気配もあった。
 プネウマ計画。愛を意味する語を冠したものが人々にもたらしたのは飢えに疫病、暴動、凍死というところだった。

「人間に価値は無い――殺してでも減らすべきだ。もう誰も『人口調節審議会』を止めることは出来ないのだよ」
 政府の側からコードウェル博士の帰還に助力した帝国陸軍の武官が、黒く艶消しした刀を突きつけた。
 人減らしが目的だと口にすることの出来る、彼は自分自身の手によってさえ組織を止めようとは思わない。


(浄化。滅ぼす。破壊する。……ほとんどは詩的で綺麗な表現だが、要は『皆殺しにする』ってことだろう)

 情報を、統制するためだろうか。
 ただ砂嵐を流すようになっていたモニタのひとつが、ノイズのような歌を流した。


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