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あと3話で完結ロワスレ

225剣士ロワ第299話「ぶつかり合う魂」 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/01/27(日) 00:35:12
 それを即座に察したゼロガンダムとスプラウトが駆けつけようにもこの距離では、あと一歩、間に合わない。
 オキクルミは自分の命が途絶えることを悟りながら、せめて一矢を報いようと――仲間達が司馬懿を倒す為の一手を打とうと、最後の力を振り絞る。
 その力の源泉は、大切なものを守るため。仲間達を、今は遠い故郷を、離れてしまった一族の皆を、友が遺したものを、ただ一心に守りたいという想い。
 オキクルミの持つ本当の強さ――自分の力を自分の為では無く、誰かの為に使おうとする、その心。
 其れ即ち、真の勇気。
 その勇気が、今、光り輝く。
 クトネシリカが青鈍色に輝き、そして虎錠刀もまた青白き輝きを放つ――。



 司馬懿がオキクルミの首目掛けて振り下ろした黒金の牙翼を、何者かが遮った。
 それはその勢いのまま、司馬懿に強烈な一撃浴びせて壁際にまで押し出した。
 オキクルミは、自分の目の前を駆けて行った神々しき四足獣の姿を見て、幽門扉を超えた先で出会ったコロポックル宿しの白い狼を連想した。
 しかし、オキクルミの顔を覗き込んで来たのは白い狼では無く、碧眼の白虎だった。
「……孫権?」
 白虎の紺碧の瞳を見て、オキクルミは何故か、孫権の名を呼んでいた。孫権とは似ても似つかぬ獣だというのに。
 孫権の名で呼ばれた白虎は、何故だかとても嬉しげに喉を鳴らした。
「バカなッ、虎燐魄だと!? 虎暁の魂を継ぐ者亡き今に、何ゆえ……!?」
 白虎の姿を見て、司馬懿が目を血走らせて叫んだ。その狼狽ぶりは、今までの余裕を保った姿からは想像できないものだった。
 白虎がそれだけの存在だと気付くと、そこへゼロガンダムとスプラウトが駆けつけてくれた。
「オキクルミ! 待っていろ、すぐに手当を……!」
 スプラウトが司馬懿との間に立ち塞がり、ゼロガンダムはオキクルミの傷を手当てしようと治療道具を探っている。
 だが、自分達の持ち物の中には、手足の欠損をどうにかできるような物が無いことを、オキクルミは既に理解していた。
 しかし、不思議と焦燥も不安は無く、それよりも、もっと別の事が気にかかっていた。
「いや……いい。それよりも、肩を、貸してくれないか。1人では、体も起こせそうにない」
 ゼロガンダムは一瞬、手の動きを止めてオキクルミの顔を覗き込んだ。
 目元は仮面に隠れているが、決して捨て鉢になったわけではないことは伝わったのか、ゼロガンダムは怪訝そうな表情ではあったが肩を貸して体を起こしてくれた。
 右手足の傷口からは大量の血が流れ出ていて、衣服も血まみれになってしまっていたが、少しも気にならなかった。
 オキクルミは改めて、白虎の姿を具に見た。そして、その腹に収められている剣を――月のように青白く輝く、真の姿となった虎錠刀を目にして、驚愕に目を瞠った。
 それを待っていたかのように、白虎は雄叫びを上げると眩い光に包まれ、そのままオキクルミを包みこんだ。
 ――友よ、君が心に真の勇気を宿す限り、我が魂は、君と共に在り続ける。
 聞こえた声は、決して、幻などでは無い。
「孫権! 本当に、お前なのか……」
 返事は無かった。代わりに、オキクルミは輝く衣と水晶のように透き通る青い鎧を身に纏い、砕けた狼の仮面は白虎の仮面へと変化して再生した。
 切断されたはずの手足は繋がれ、両の手にはそれぞれの輝きを放つクトネシリカと虎錠刀が握られていた。
 自らの過ちにより殺めてしまった友に、許されたのみならず、二度までも救われた。
 オキクルミは喜びの涙を堪えることができず、頬を一筋の涙が伝った。





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