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あと3話で完結ロワスレ

216剣士ロワ第299話「ぶつかり合う魂」 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/01/27(日) 00:15:39




 逞鍛は天井近くまで跳躍し、すぐさま空中で反転し急降下。すれ違いざまに斬り付けられたが、ゼロはそれを力の盾で防いだ。だが、僅かに反応が遅れ髪の毛の先端が斬り落とされた。
 衛有吾と比べて全く遜色ない速く鋭い一閃。もしも衛有吾の剣を見ていなければ、盾での防御も間に合わなかったか。
「気に食わんな、貴様は……貴様らレプリロイドは」
 両手に握る二刀を自在に操りながら、逞鍛はゼロに対して怒りと嫌悪の言葉を叩きつける。だが、その声色には全く感情がこもっておらず、響きは虚ろなままだ。
 右手の剣と左手の盾で二刀を捌きながら、ゼロは逞鍛に問い掛ける。
「以前、お前は心を排除したレプリロイド……鉄機武者とやらを使って、自分の国を征服しようとしていたらしいな。それと関係があるのか?」
 衛有吾から聞いた話によれば、逞鍛は邪悪武者軍団という敵対勢力に、軍事の最高責任者の1人という立場でありながら自国の軍備の重要情報を漏洩して自国を窮地に追い込み、一大反攻作戦の実行段階で離反し自国軍を崩壊させ、邪悪武者軍団に自国を制圧させた。
 その数年後には何食わぬ顔で邪悪武者軍団との再度の決戦に参加して自国軍を勝利に導いたが、それも全ては逞鍛自身の野望の為だった。それこそが、レプリロイドと極めて近い存在である鉄機武者軍団による自国の征服だったと、衛有吾は語った。
 先程の言葉と、衛有吾から聞かされた逞鍛のかつての野望。そこに、何かのヒントがあるような気がして、ゼロは敢えて反撃に出ず、防御に徹して逞鍛の言葉を待ち続けた。
 やがて、逞鍛が口を開いた。
「何故だ。何故、貴様らは心を持つ。本来、貴様らはカラクリ人形と、心を持たぬ道具存在と同じだというのに」
「何だと?」
「何故、貴様らの創造主たるあの2人は貴様らに心を持たせた? 貴様も人間にいいように利用され、同族殺しを強要されているというのに……何故、心を持ち続けている?」
 僅かに、逞鍛の二刀に込められた力が増し、打ち込みが激しくなる。一方、ゼロは一瞬、息を呑んだ。
 逞鍛は知っているのだ、ゼロ自身も忘れてしまった、ゼロの出自の秘密を。恐らくは、この殺し合いに連れて来る段階で時空を超える技術を用いて調べ上げたのだろう。
 もしもそのことだけを告げられていたら、ゼロは同様から一気に切り崩されていたことだろう。
 だが、続いて投げかけられた言葉が、オーバーヒート気味だった頭部に冷却水を浴びせたようになり、ゼロは一瞬で平素の冷静さを取り戻した。
「……俺達を作った人間の意図など知らん、本人達に聞け。そして、俺達が心を持ち続けているのは、お前と同じだ」
 言うと同時に一層の力を込めて炎の剣を振るい、逞鍛の二刀を斬り払う。
「決して捨てられない感情が、想いが、この心の中にある。それだけだ」
 剣を握ったまま、右手で自分の胸を叩く。
 記憶回路や思考回路、感情システムなどは全て頭部にあるのだが、そこを指すことこそが当然だと、ゼロは無意識にそのように示した。
「違うな。感情など、オレはとうの昔に捨て去った。我が心も、既に無に等しき暗黒の闇……そのもの」
 逞鍛はゼロの言葉を、静かに否定した。だが、揺れる瞳の奥底に一瞬だけ垣間見えたもの。それを、ゼロは見逃さなかった。
「ならば、俺を気に食わんと毛嫌い、執着するのは何故だ? それは、お前の感情じゃないのか?」
 ゼロからの追及を受け、逞鍛は顔を俯け、両腕を脱力してだらりと下げた。そのまま、逞鍛は無言で佇んだ。ゼロも口を真一文字に結んで、待ち構える。


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