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あと3話で完結ロワスレ

215剣士ロワ第299話「ぶつかり合う魂」 ◆9DPBcJuJ5Q:2013/01/27(日) 00:13:52
 トゥバンは鬼神突を受けながらも踏み込み、タクティモンの胴に強烈な一撃を叩きこんで来たのだ。
「ぐぅ……!?」
 痛烈な一撃に、口から息が勝手に漏れ出す。クロンデジゾイドにも匹敵する強度を誇る鎧にも、鋭い切り傷が刻まれる。
 次いで、顔面目掛けて振るわれた剣を辛うじてかわすが、仮面の端を斬られ、砕かれた。遮二無二、右手を蛇鉄封神丸の柄から放して乱雑に振るう。
 しかし、既にトゥバンはタクティモンの間合いの外に離れていた。タクティモンが振り払おうとしたのは、残像だったのだ。
 全身に、怖気が走る。
 タクティモンの眼力を以ってしても、残像を残す巧みな体捌き、そして純粋な速さ。それなのに、何故先程までは、タクティモンの剣をかわせなかったのか。その意味は、先程の剛剣と、トゥバンの表情を見て理解した。
 かわせなかったのではなく、かわさなかったのだ。
 かわせばその分体勢が乱れ、踏み込みも浅くなってしまう。それではタクティモンを斬れない。だから、掠る程度にしかかわしていなかった。
 理屈は分かる。しかし、それを実行に移そうという心胆、そして実現できる技量は、最早、人のそれではない。
 魔人を震わせるものなど、鬼か修羅しかありえまい。
「く、くくく……ははははは……」
 自然と、タクティモンの口から笑い声が漏れた。
 砕けた仮面からはタクティモンの本体――1つの存在として練り固められた、数万年来溜まり続けた武人デジモン達の怨霊体が瘴気と共に噴き出ていたが、それは些細なことだった。タクティモンにとっても、トゥバンにとっても。
 正直、タクティモンはトゥバンをどこか侮っていた。剣の腕こそ評価に値するが、所詮は人間であり、その身体能力はデジモンには遠く及ばないものだと。
 しかし、違ったのだ。目の前に立つ男は、聖騎士オメガモン以来の――ある意味では彼以上の強敵だったのだ。
 身体が奮える。今まで感じたことの無い歓喜に、魂が沸き立つ。
 トゥバンは、剣を構え、笑みを浮かべたまま動かない。タクティモンが態勢を整えるのを待っているのだ。
 求めているのは単純な勝利ではなく、十全の状態の相手を斬り伏せた上での、真の勝利。
 それは、タクティモンも同じだった。戦略的な完璧な勝利からは程遠い、個人の自己満足とも言えるもの。それを、今はタクティモンも渇望していた。
 数万年来彷徨い続けた武人達の無念の魂が、真に一丸となって咆哮する。
 ――目の前の修羅に剣で以って勝ってこそ、我ら戦士の本懐なり!!――
 それを自覚すると同時に、タクティモンは主君であるバグラモンに詫びた。
 我らが無念を汲み取り、最強の剣と共に刃に最期の振り下ろし場所を与えて下さった我が君よ。御許し下さい。貴方の御心からも、貴方へ捧げた我が士道からも外れ、ただただ歓喜に打ち震えるだけの私を。これも武人の我が儘と……諦めて下さい。
 最後の未練を打ち払うと同時、タクティモンは蛇鉄封神丸を掲げ、改めて名乗りを上げる。
「我はタクティモン。蛇鉄封神丸を振るい、神を殺し世界を分断する為に造られた器なり。磨き抜いた魂、鍛え抜いた技……我が存在を成す全てを懸けて。トゥバン・サノオ……貴殿を斬る」
 これを聞いて、タクティモンの言に疑問など一切持たず、剣を持つ修羅も即座に応える。
「わしが名はトゥバン・サノオ。大した肩書も持たぬ……ただ、強いものと戦いたいだけの大馬鹿よ。誉れ高き武人、タクティモンよ……おぬしを斬る」
 互いが名乗りを終えると、両者は同時に踏み出した。
 剣戟は更に激しく、苛烈なものへとなって行く。
 それでも、2人の恐怖と喜びだけは、変わらない。







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