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あと3話で完結ロワスレ

195299:すべてが0になる ◆YOtBuxuP4U:2013/01/17(木) 15:21:32
 
「だからあの五人を開始直後から眠らせたと言うのか。
 だから――殺し合いを邪魔し続け、すべてを『なかったこと』にしたと言うのか」
「そうだね。彼女たちは鰐塚ちゃん以外、学内との人間のかかわりも最近できたばかりだ。
 彼女たちなら、100人近い人間が死んだ事実を、ある程度遠いところから見ることができる。
 いつかそうなったかもしれないくらいの――現実的な重荷を背負ってくれる。
 って思ってたんだけどね。僕も完璧じゃない。もうそろそろ彼女たちは起きてしまうだろう。
 計画は失敗、僕はまた負けたわけさ。エピローグで起きてもらうのが理想だった」

 ――でもまあ、ベストじゃないけどベターかな。
 球磨川禊は左手で大きな螺子を弄びながら自らを賞賛するように胸を張った。

「少なくとも、ここまでのすべてを100とするなら、
 そのうち99は『なかったこと』になった。
 彼女たちが背負わなければいけない重みは百分の一だ。
 ほんの少し――酷い悪夢くらいの重みに。実感の湧かないレベルの重みになったはずさ」
「――なっ」

 と。球磨川禊は左手の螺子を投擲した。
 直線軌道で飛んだそれは、綺麗に背景へと突き刺さる。
 安心院なじみの自殺体へと突き刺さり、その傷を『なかったこと』にする。

「また――お前は」
「人の死に。ドラマがあるから重みは生まれる。
 その現場に居合わせなくても。どうやって死んだのかが推測できてしまったら、
 物語が生まれてしまう。――語り継がれてしまう。
 ――こんな最悪な物語は語られるべきじゃないんだよ、半纏くん。
 あの子が強く生きたことも、あの男が成長したことも、
 あの人が狂ってしまったことも、あの少女が絶望してしまったことも、
 誰が笑って死んだのか、いつ何を思ってたか、ぜんぶぜんぶ――、
 僕は美談にしてほしくないんだ。
 人の死を、かんたんに楽しんでもらいたくないんだ。
 誰かの死にざまは見世物じゃない。ただそこにあるだけで、留めておくべきだ」
「なじみを……なじみの死をそこにあっただけで受け止めろと言うのか」
「そうだよ。それが君の罪だ、
 不知火半纏――未来読書のスキルを作ってしまった君のね』

 冷たく。
 本音を抑え、いつもの格好つけた調子に戻りながら、
 球磨川禊が放った最後のフレーズが、不知火半纏の心に刺さる。

「未来読書の、スキル」

 未来読書のスキル《土曜の夜に感想(ネタバレセンチメント)》。
 不知火半纏はそのスキルを、その存在を覚えていた。
 忘れもしない、百年ほど前に安心院なじみの要請で彼が初めて作ったスキルだ。

「まさか。まさか――なじみは使えたのか。あれを」
『そうとしか考えられない。
 予知スキルをいくつも持つ安心院さんだけど、君の作ったあのスキルはそれとは一線を画す』
「そう、そうだ。《土曜の夜に感想(ネタバレセンチメント)》が予知するのは、
 “今後の展開”だ。この現実を週刊少年ジャンプに例えるならば、
 一年先までの未来のジャンプを読むことが出来る――そういう能力を、作った」


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