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あと3話で完結ロワスレ

183それはきっと、いつか『想い出』になる物語 ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/13(日) 21:51:06
 ◆◆

 トトリの力になりたい。
 ツェツィを大好きなトトリに戻ってもらうために、できることをやりたい。
 それは紛れもないクマの本心だった。  
 ツェツィのことをしっかり伝えたい。
 たとえば、どれだけトトリを愛していたか。たとえば、どれだけトトリを想っていたか。
 たくさん、たくさん、たくさん伝えたい。
 それは心底からの、クマの望みだった。
 けれど、それを叶える為の時間は限りなく少ないのだ。
 ならば、共に在れれば。
 同じ場所で同じ時間を過ごせれば、トトリの力になれる。ツェツィのことを伝えられる。
 アーランドへ行くことはできない。きっと今も、菜々子が稲羽市で、悠たちを待っている。
 だから、もしも。
 もしもトトリが稲羽市に行くことを望んでくれれば、あるいは。
「ありがとう、クマさん。気持ちは、とってもうれしい。誘ってくれて、本当にうれしい」
 トトリがはにかみ、目を細める。それは確かな笑みではあった。
 けれども、その瞳は潤んでいた。潤んだ瞳に宿っている感情を、クマは見る。
 その感情は、郷愁だ。

「でもわたしは、アーランドへ帰るよ。アーランドへ、帰りたい」

 その言葉に、クマはさみしさと。それを遥かに超える安堵を、覚えた。 
 たとえ何かを失くしても。
 たいせつなものを失ったとしても。
 帰りたいと思えるだけの、世界が在るのならば。
 それはきっと、とてもしあわせなことなのだ。
 だからこくりと、大きく頷く。
「トトチャンの――みんなの幸せを、祈ってる。ずっとずっと、祈ってる」
 それでいいと思えた。
 それがきっと、クマにできる最善だ。

 クマは振り仰ぐ。
 ヴァージニアとカズマを、振り仰ぎ、隣に並ぶ。
 別れの時だ。
 この悪夢にも、よかったことだってあったと思う為に。
 クマは笑う。
 ヴァージニアも、カズマも、トトリも。
 笑って、くれたのだった。
「じゃあ。みんな、元気で! みんなとの『想い出』は、ずっと抱き締めて行くからッ!」
「あばよ、お前らッ!」
「みんなは、いつまでもいつまでも、クマの仲間クマッ!」
 手を振って。
 まどろみの回廊へと足を踏み出す。
「皆さん、ありがとうございましたッ! どうか、どうかお元気でッ!」
 トトリの見送りを背で聴いて。
 クマは、ヴァージニアは、カズマは。
 振り返ることなく、歩いて行く。
 立ち止まることなく、歩いて行く。
 手にした『想い出』を胸に。
 目覚めの道を、その足で踏み締めて歩いて行くのだった。

【ヴァージニア・マックスウェル@WILD ARMS Advanced 3rd ファルガイアへと生還】
【カズマ@スクライド ロストグラウンドへと生還】
【クマ@ペルソナ4 ザ・ゴールデン 稲羽市へと生還】


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