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あと3話で完結ロワスレ
178
:
それはきっと、いつか『想い出』になる物語
◆6XQgLQ9rNg
:2013/01/13(日) 21:43:54
◆◆
ヴァージニアがトトリと過ごした時間というのは、ほとんどなかった。
なので、ヴァージニアは元々のトトゥーリア・ヘルモルトという人物を知らない。
彼女が知るトトリというのは、速水殊子を姉と慕うトトリと、真実を知り壊れてしまったトトリだけだ。
そして今、目の前のいるトトリもまた、元々の彼女ではないのだろうなとヴァージニアは想う。
姉や友人や仲間のことを、トトリは記憶している。殊子のことも、クマのことも、ヴァージニアのことも、カズマのことも覚えている。
この悪夢のことも、確かに覚えているようだった。
ただ、その記憶はクマの持つ『想い出』との食い違いがいくつかあり、疎らになっていた。
トトリの異変はそれだけではない。
会話を通し、ヴァージニアは気付いたのだ。
トトリの話しぶりから、これまで関わってきた人物に対する強い強い気持ちが感じられないということに、だ。
これは、異常だった。
トトリの精神が崩壊した原因とは、だいすきでたいせつな人たちの死に心が耐え切れなかったからである。
仮に、これほどまでに他人に対する執着が希薄であるならば、彼女の精神が壊れることはなかったはずだ。
今のトトリの振舞いは、これまでたいせつな人などいたことがないかのように、感じられた。
そして。
その様子は、あまりにも自然すぎた。
今のトトリは、ヴァージニアが知るどのトトリよりも、普通に見えたのだ。
機械からいくつか部品を抜き取って組み直したにも関わらず、正常に動いてしまったかのような違和が、今のトトリからは感じられるのだった。
――悪化、しちゃったのかな……。
最初に出会ったこともあって、もともと、殊子とトトリは仲が良かったはずだ。
その殊子を手に掛けてしまったせいで、心が更に壊れてしまったのかもしれないと、ヴァージニアは想う。
あのとき、殊子を残していったのは間違いだったのだろうか。
殊子の意志を無視し、無理にでも誰かが残っていれば。
首を横に振り目尻を拭い、涙を呑み込んだ。
未来予知ができるわけではない。無数の選択肢から、自分にとっての最善を選んでここにいる。
殊子だってそうだ。彼女もまた、彼女にとっての最善を選び出したはずなのだ。
だから悔やんではならない。後悔なんてしたくない。
それよりも、これからどうすべきかを考えるべきだ。
「……聞かせろ」
片膝を立てて座るカズマから、鋭い声が飛ぶ。
「殊子が逝ったときのことを、教えろ。アイツはなんて言っていた? どんな顔をして、逝った?」
それは、トトリが負った心の傷に触れる、無遠慮な問いだった。
「ちょっとカズマ! あなた、もうちょっとトトリの気持ちを――」
止めようとするヴァージニアを、カズマの言葉はぴしゃりと遮断した。
「殴るのはやめてもいい。だが、アイツを俺の『想い出』に刻むために、これだけは聞いとかなきゃならねェ」
「……それは、わかるけど……ッ」
ヴァージニアは、唇を噛んで言葉を止める。
そのカズマの想いを、否定はできない。
彼の気持ちは、ヴァージニアにもよく理解ができたからだ。
「だからって、そんな、そんな不躾な言い方をしなくてもッ!」
「心配、ありがとうございます。お話しさせてください」
ヴァージニアの心配とは裏腹に、トトリの声色は落ち着いていた。
そしてそのまま、トトリは語るのだ。
抱き締めてくれた温もりを。
掛けて貰った言の葉を。
悲しそうな目で、少しだけ嬉しそうにはにかんで。
トトリは、語る。
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