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あと3話で完結ロワスレ

163素晴らしき小さな戦争(0)雨時々僕たちまち君 ◆MobiusZmZg:2013/01/12(土) 19:32:40
REPLAY #248-01 ◆ 導入フェイズ あるいは、回想シーン


 ――あら。
 ほんとうに、これでよろしいんですの?
 血盟『影弥勒』が行う【分断】と、迷宮支配者が【決闘場】の罠による戦場の二重分割。
 後者は単なる予想ですけれど、黒須左京が加賀十也との邂逅を望むかぎり、彼は罠を作ります。
 斜歯忍軍が神器『神鏡』を持てるわたくしには、未来の一端も視えるのですから。
 ときおりノイズが交じりますけれど、狭く深く視られるこの場でならば、解釈を違えることもない。
 それに、未来を知ることのない貴方にも、この程度のことは分かるでしょう。

 この戦場……『迷宮』では、思いが力になる。
 左京くんの思いが核となった交錯迷宮なら、なおのこと思いとのリンクは深まる。
 《希望》が魔力や活力を生み、《好意》がひとを動かすのなら、逆もまたしかりですから。

 だから盤上に出来るものは、一騎討ちの札がみっつというところ。
 けれど、この配置と面々では――この戦争の結末など、最初から見えたも同然ですわ。


 こうと告げても頑是無いのが貴方ですから、断言して差し上げましょう。
 いかに鉄火場を演出しようと、ここではもう、『消化試合』しか生み出し得ません。
 かりに忍神が生まれたとて、これ以上なにを生むこともなく、これより奥のなにを抉ることもなく。
 すべての可能性というべきもの、拾いあげたいと思えるものは行き詰まって消えるでしょう。


 もう、お分かりになりましたね。
 これが「敵を粉砕する『だけ』で終わる物語」なら、終局までに三手も要しませんわ。
 玄冬を殺した救世主。十也くんを喪った『マスターレイス14'』。ここで転生しようとしている完全者。
 それに、萬川集海に呑まれかけている藤林が末裔も――ほうら。みんな、一手でまとめて滅殺出来ますでしょう。
 一騎討ちの戦場を用意して、それぞれに照明の当たる晴れ舞台を用意してやったところで事実は変わりません。
 むしろ、終わるべきとされたものどもの苦しみは増します。かれらの瑕を丁寧に抉っていくわけですから。

 そうであるなら結局は、生きられそうにないと決め込んだものを、手早く切り捨ててゆくしかない。
 生きたくないとわめくものの口を塞がせるしかない。もう生きる目的がないと思ったものの道を閉ざすしかない。
 生きたくなくても生き残るという道を赦さず、生きたいという『敵手』の願いさえも、『敵手』のそれであるから
という単純きわまりない二項の対立で整理していくしかない。

 こうしたならば、見たいと思えたものの、上澄みと記号だけをかたちにして……ただの三手で魅せていける。
 果たして結晶化された思い出は、もはや心水へ溶けて胸を乱すこともなくなる。救いといえばそれだけですか。

 もしも、もしもそのなかに、ときおりひとの指を突く棘があるのだとしましょう。
 積み重なる予定調和の中にも、ひとの目を引く彩りの花弁があったとしましょう。
 けれど、それはただ、それだけで終わってしまうものです。わたくしはそう信じます。
 そうと信じている間にも――この盤面では、生きあがくことと進むことの煌めきが描かれ続けます。
 美しき終幕のためだけに有り物を使い尽くして、影は、そのかたちも顧みられぬまま使い潰していかれます。
 きっと生き残ったものは、喪ったものどもを心の糧として、迷わず光の差す場所へ歩いて行くのでしょうね。
 単純化された世界で、焼け野原のようになった陣地に春花のひとつも見い出したなら、それで物語は終われますわ。


  ――華と散れぃ!


 なぁんてセリフも聞きましたけれど、ねえ……ふふ、ムラクモさん。
 そんな方でも終わりには花を添えねばならないだなんて、とんだ皮肉で、誤算ですわよねぇ。


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