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あと3話で完結ロワスレ
131
:
299話「裏」
◆nucQuP5m3Y
:2013/01/04(金) 03:01:12
「ザケル!!」
最後にホールに響いたのは霊幻の声だった。
オリンピアの右腕によって両断された世界鬼、その半身がいまだ力を失っていないと見るや、手にした魔本へ心を込めて呪文を唱えると、放たれた雷撃により世界鬼の半分が消し炭へと変わる。
霊幻の眼前にはエネルギー体として浮かぶ魔物の子、本来の召喚が行われていたならば「ガッシュベル」と呼ばれる正義と友情を尊ぶ男の子の輪郭がぼうっとした光を放っていた。
今回のゲームにおいて、本来の肉体ではなく魔法を行使するためのエネルギー体として召喚された魔物の子らの中でも最も潜在能力の高い彼を、霊幻はゲーム開始からずっと使役していた。
三日目の朝、皆本と永遠の別離をすることとなったあの戦いまでは。
「皆本……悪ぃ。薫を守れなくて」
別世界の組織BABELの基準を借りるならばレベル6の複合能力者という規格外、影山茂夫をアルバイトとして雇う霊幻は、全くの無能力者だ。
超能力、霊能力、そういった類のものを一切持たず、ペテンとフォトショップとマッサージで詐欺まがいの霊感相談所を営む彼は、この狂った物語の中で皆本という男に会った。彼もまた、能力を持たずして、BABELの超能力少女達を見守る普通の大人だった。
互いの境遇を(霊幻に関しては半分程度が嘘と自惚れだったが)嘆きながら、互いの保護すべき子供達との邂逅を願ってやまなかった二人。
その二人が、その守るべき子を眼前で失い、絶望の中で分かれたあの戦いが、今はっきりと霊幻の心に還っていた。
そして、皆本から託された、BABELのチルドレンの最後の一人、薫が死んだ時のこと、皆本の世界が失われることとなったあの瞬間のことを、身を裂かれるような後悔と共に、いまやっと手に入れた。
「お前、一番弱いはずなのにずいぶんとカッコつけてるな」
ゼクレアトルの視線に、得意の嘘もペテンもなく、真正面から霊幻は応えた。
「俺は無能力者だ。モブも、薫も、他にも沢山いた子供らを守ってやれない、無力な大人だ。でも、それでも、俺は大人なんだ。世渡りってやつを、子供に見せてやる責任があるんだよ!ザケルガ!!」
雷撃がゼクレアトルへと飛ぶ。
しかしそれは彼にぶつかる直前に一瞬陽炎のようにゆらめいて、そのまま憎き仙人の体をすり抜けた。
「やはり、次元の断層……!」
仙人と参加者を隔てる世界そのものの谷間に、霊幻は一瞬歯噛みする風を見せる。
が、次の瞬間には転がるように後ろへ飛んでいた。
「鉢かつぎ!極印を!」
「霊幻様!」
阿吽の呼吸で鉢かつぎはかぶった鉢を傾け、霊幻の持つ本に触れさせる。
鉢から流れ出た光が、魔本へと移り、本の表紙に三日月の模様を浮かばせた。
「ザケル!!」
再度、霊幻によって雷撃の呪文が唱えられる。
「クソッ!!やはり"そういう設定"になったか!」
その雷は文字通り光の速さでゼクレアトルへと殺到し、そして、彼の肩を掠めて後方へと飛び去った。
「どうだ、これでお前は丸裸だ。ゼクレアトル」
読み手(にんげん)世界に現れる、月打された御伽噺の人物とその御伽噺そのものを正す、猛き月光は元より隔てられた虚構と現実の世界を繋ぐ力を持っている。それゆえに、届くのだ。次元を超えて、届いたのだ。
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