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あと3話で完結ロワスレ

125299話「裏」 ◆nucQuP5m3Y:2013/01/04(金) 02:59:13
「おいおいどういうことだ? どうやった? どうして"俺様が認識できない"んだ?」
不思議な顔でハクアと残りの五人を交互に見ているのはゼクレアトルだ。
「お前の好きな読者って奴のために、ネタバラししてやろう」
組んでいた腕を解いて、右手に何かの本を持った霊幻が一歩進み出る。
その瞳には先ほどまでの悲壮ともいえる決意とは全く違う、確信の光が灯っている。
「まず、お前は俺達のことを全て把握できると思わせていたかったようだが、それは違う。そうだな?」
「……」
沈黙を肯定と受け取って霊幻は続ける。
「確かに俺も、他の連中もずっとお前に監視されていると思っていた。だが、二度目の放送でお前が物理的な監視では説明がつかないことを言った。参加者の『感情』について述べたんだ。もちろん、憶測で言ったものととることも出来たが……俺と、もう一人はそうは考えなかった。お前が本当に参加者の心情にまで監視の目を届かせていると、そう判断した」
ゼクレアトルは反応を見せない。
「俺は答えにたどり着くのは簡単だった。支給品がこれだったからな」
そう言って、手にした本の表紙をゼクレアトルに向ける。
『ゼクレアトル 〜神マンガ戦記〜』
『打ち切りだ』と吹き出しで喋るゼクレアトルの絵が印象的な表紙には、そのタイトルと1巻のナンバリングが見て取れる。
「この中にある、お前とカン太のやりとりに全部書いてある。『この出来事は全てマンガになって、仙人たちが読んでいる』ってな。だからすぐにわかった。"このゲームもまた、マンガとして誰かに読まれている"。その読者ってのがこの話同様に仙人たちなのかはわからんが……少なくともお前、ゼクレアトルもまた、描写されたマンガを読んで、そこから参加者の情報を得ていたんだ。そうだな?」
霊幻の手にあるそのマンガは、ゼクレアトルそのものの名を冠し、彼と、彼に翻弄される主人公の運命を描いた、メタ手法のマンガだった。
ゼクレアトルが、主人公であるカン太に彼がマンガの主人公であることを教え、その上でどうやって生きていくかを試し、それをマンガにした日常系非日常の、トゥルーマンショー的なマンガ。ただ、そこから先に強烈などんでん返しがあるのだが、それについては今は割愛する。
「だから、俺は作戦を立てることが出来たんだ。このマンガにあったぜ『載せて都合が悪いことは、描写されない』ってな。もちろん、ヒントとなりうる描写程度はされていたかもしれないけど……結果はこうだ」
「……こう言うときは極力茶々をいれねぇのが犯人側のマナーだ。それとも推理漫画の犯人のようにこう言えばいいか?『それはお前の憶測に過ぎないじゃないですか!』、あるいは『はっはっは、想像力の逞しい探偵さんだ』って……。いや、俺はあの蛇足感がどうも嫌いだ。いいぜ、認める。俺はお前達を、この仙人サンデーの紙上で監視していた。だが、それは裏をかかれた理由にはなっていないぞ。お前達の作戦が、描写されて都合が悪くなることなんて、俺には一つもない。作戦のからくり自体は大体読めてる。蝉の持ってた最後の不明支給品……あれが『神のみ』の羽衣だったんだな……あれでハクアの身代わり人形を作り、迷彩で俺様の後ろに回る……そして紫陽花"玉"で世界を入れた容器を爆破。……でも、それが描写されていない理由はなんだ……蝉がハクアに羽衣を手渡したシーンもなかった!」
「だからさ、お前は根本的に勘違いしてるんだよ、ゼクレアトル。お前が"管理者"でいられたのはついさっきまでだ」
「なんだと?」
霊幻は手にした漫画を突き出し、振り上げ、床に叩きつける。
「この話を読んでるのは、お前だけじゃない。いや、むしろこの話はお前でない誰かに読まれるために作られた……そろそろ、気づいただろ?」
「……!!」
はっとした顔のゼクレアトル。
左手に持った仙人サンデーを、右手でもって高速で捲っていく。
「そうかよ……そういうことか」
「そうだ、そういうことだ」
ゼクレアトルはページを開いたまま雑誌を投げ捨てる。
開かれたページには、つい一瞬前にゼクレアトルがしてみせた驚愕の表情がそのまま描写されている。
次のページには霊幻の顔がアップで描かれ、にじむように直前の会話が浮き出し始めていた。


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