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あと3話で完結ロワスレ

113Memoria Memoria -想い出を抱き締めて- ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/02(水) 19:31:10
「う、あ――ッ! ああぁあああぁああぁああぁあああぁああぁあぁぁぁあ――――ッ!!」
 夢魔から迸る叫びには、もはや意味など宿っていなかった。
 なおも逃げようとするその身を、氷が覆い尽くす。
「クマは、クマクマッ! みんなと出会って、クマは、他の誰でもない、クマになれたクマッ! 
 この『想い出』は、何があっても、どんなことがあっても、ゼッタイにゼッタイ、手放さないッ!!」

 蒼く白い氷は、カムイモシリによるブフダイン。
 もはや偽物の『想い出』で融解させられるほど甘くない、強固な氷塊。

「わたしは現実を生きてゆくッ! 貴方が奪った『想い出』をみんなに返して、わたしの現実を生きてゆくッ!!」

 鮮やかなクイックドロウが果たされ、銃声が連続する。
 数は十。弾痕が描くは十字の軌跡。
 ガトリング・十字砲火<ノーザン・クロス>。
 硝煙を置き去りにして一気に吐き出された銃弾は正確無比に、ベアトリーチェを十字に射抜く。 

「俺が、この俺の拳がッ!! 俺たちの『想い出』がッ!!
 この悪趣味な夢を終わらせてやるッ!! てめェの夢も、ここまでだぁ――ッ!!」

 カズマの両拳から、猛烈な輝きが迸る。
 迸るのは力ある光。刻んだ『想い出』を乗せた全力の一撃。
 全力のシェルブリット・バーストは、一切の抗いさえ許さず、ベアトリーチェへと疾走し――。
 クマの氷もろとも、割り、砕き、貫いた。
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ」
 夢魔の絶叫と共に、莫大な量の光が爆ぜる。
 爆ぜる。
 爆ぜる。
 爆ぜる――。
 
 ◆◆

 光が晴れた時、そこにベアトリーチェの姿は存在しなかった。
 首輪が霧のように消失する。
 終わった。
 終わったのだ。
 だが、激しく震動するナイトメアキャッスルは、ブルーを弔う時間すら与えてはくれない。
 柱は折れステンドグラスは砕け天井は落ち玉座は罅割れていく。
 主を失った悪夢の城は、集合無意識の海へ還り始めていた。
 ベアトリーチェの手による爆発が行われずとも、崩壊が発生することは想定できていた。
 とはいえ、悠長に構えてはいられない。
 夢に呑まれて消えるわけには、いかなかった。
「急ぎましょう。殊子たちのことも気になるわ」
「トトチャン、コトチャン、クマがすぐ行くクマ! 待ってるクマよーッ!」
 我先にと駆け出すクマ。その背を、急いでカズマとヴァージニアが追う。
「行くのはいいけどよ! アイツらがやりあってたらどうすんだ?」
「その心配はいらないと思う。首輪もなくなってるし、城が崩れ始めてるから、殊子なら終わったって気付いてくれるわ」
 殊子と別れてから、もう1時間は経過している。
 心配するべきなのは、最悪のケースの可能性だった。
「……万が一の場合は、わたしがトトリを眠らせる。そしたら、急いであの子を――」
 ヴァージニアの言葉を轟音が遮る。震動が強さを増した。
 立っていることすら困難なほどに、城が激しく揺れる。
「ク、クマーッ! ゆゆゆゆゆ、揺れております! ぐらんぐらん揺れておりますよーッ! と、とっと、とっ」
 クマが、足をもつれさせた。
 転ぶ。
「ちょっと、クマッ!?」
 丸い体が階段へと落ちていく。
「お、おい! クマ野郎ッ!?」
「せーかーいーがーまーわーるークーマーッ!」
 下り階段を、物凄い勢いで転がり落ちていく。絶えない震動が、クマの身を大きくバウンドさせた。
「まったく! 元気になったと思ったらこれだわッ!!」
 次第に大きくなっていく揺れの中、階段を駆け下りる。
 かつてのナイトメアキャッスルよりも遥かに広く大きく複雑に作られていたせいか、予測よりも崩壊が早い。
 壊れて崩れて落ちていく。溶けて混じって乱れていく。
 夢の城を構成するあらゆる物質がノイズに喰われていく。
 ノイズの中、蠢くものがヴァージニアの目に入った。
「あれは――ッ!?」


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