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あと3話で完結ロワスレ

110Memoria Memoria -想い出を抱き締めて- ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/02(水) 19:28:51
 ◆◆
 
 駆ける。
 駆ける。
 駆け抜ける。
 ヴァージニアの『想い出』の中を、カズマは叫びながら突っ走る。
「眩しいんだよ……ッ!」
 シェルブリットで推進力を生み、大気を爆ぜさせ、ひたすらに前へ。
「眩し過ぎるんだよ……ッ!!」
 加速に加速を重ね、ぶっ飛ばす。
「この『想い出』は、眩し過ぎるんだよッ!!」
 邪魔者をすべて殴り飛ばし前へと進む拳を頼りに、突っ走る。
「だけど――だけどなぁッ!」
 拳には、輝きがある。
 目を灼きそうなほどに真っ白で強烈な、輝きがある。
「俺の『想い出』だって負けちゃいねェ! 刻んできた命だって負けちゃあいねェんだよッ!!」
 歌が聞こえる。
 ヴァージニアの『想い出』で、シェリル・ノームが歌っている。
 その歌声が、リズムが、メロディが、カズマの心を高ぶらせる。
「そう思うだろッ! お前もッ!!」
 言っている。
「負けていられねェだろッ! お前もッ!!」
 カズマの『想い出』が叫んでいる。
 わたしも歌いたいと――叫んでいる。
「歌わせてやるよッ! 俺は刻んだんだッ! お前を――お前の歌をッ!!」
 だから歌える。
 歌えるのだ。
「歌えよッ! ランカぁ――ッ!」
 カズマの『想い出』に、フォールドクォーツが反応し――カズマの『想い出』が広がっていく。 
 
 ――行って! カズマッ!
 ――ぶっ飛ばせカズマッ!
 ――やっちまえ! カズヤ!
 ――カズくん、負けないでッ!

「ッたりめェだぁ――ッ!!」
 声援に、ランカ・リーの歌声が重なった。
 力が、背中で炸裂する。
 更なる加速を得て、カズマは最高速度でベアトリーチェへと突っ込んでいく。
 拳が衝突する。
 ベアトリーチェの前で、障壁がカズマの拳を受け止める。
「度し難いほどに愚かだわ……ッ! 何度阻まれれば気が済むのかしらッ!!」
「決まってンだろッ! てめェを、徹底的にボコるまでだッ!!」
 前へ。
 前へ。
 壁をぶち破るために、前へ。
 いけないはずがない。壊せないはずがない。
 偽物の壁など、壊せないはずがない。
 こいつは、今までずっと共に在り、あらゆるものを砕いてきた拳なのだ。
「こんな壁なんざ――ッ!」
 アースガルズの対消滅バリアに比べれば、屁でもない。
 あの野郎の――絶影を持つ男、劉鳳が抱く正義の信念の硬さに比べれば、こんなもの壁にすらなりはしない。
 なりは、しないのだ。
「ブチ壊して、先へ進むぜ――ッ!!」
 具現化したカズマの『想い出』が、弾け飛ぶ。消えたのではない。途絶えたのではない。
 他でもないカズマの意志によって、分解されたのだ。
 そして、再構成が始まる。
 塵のように細かくなった『想い出』はカズマの全身に収束し集中し、一層激しい輝きとなる。
「俺の、この俺だけの――ッ!!」
 髪は伸び、金色の装甲は右半身だけでなく全身を覆う。風車状の羽は長さを増し、尻尾のように伸び上がる。
 光の中から現れたカズマは、百獣の王を彷彿とさせる外観をしていた。
「自慢の――ッ!!」
 シェルブリット・最終形態。
 伸びた羽が床を叩く。これまでの力を遥かに超える勢いが、カズマに力を与えてくれる。
「拳でなぁ――ッ!!」
 ベアトリーチェに驚愕する暇さえ与えず。
 カズマは、借り物のバリアを打ち砕いた。


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