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あと3話で完結ロワスレ

109Memoria Memoria -想い出を抱き締めて- ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/02(水) 19:28:18
「わたしの『想い出』を聴けぇ――ッ!!」

 ヴァージニアの『想い出』が、城中にぶちまけられる。
 ARMの扱いを教えてくれた父とのこと。
 ブーツヒルで叔父、叔母と過ごしたこと。
 渡り鳥として旅に出た日のこと。
 ジェット、ギャロウズ、クライヴと出会ったときのこと。
 荒野の厳しさも激しさも荒々しさも知らず、無知だった頃のこと。
 ヴァージニアの心から映し出された『想い出』は、集合無意識を通して次々とナイトメアキャッスルを満たし、溢れさせていく。
 左手の中の熱を、ヴァージニアは握り締めて、更に『想い出』を見せつけていく。
『想い出』の舞台はファルガイアを越え、殺戮の悪夢へとシフトする。
 イデア・リーにかつての自分を重ねてむず痒くなったこと。
 白野蒼衣と共に、悪夢について議論を交わしたこと。
 エミリアに背中を預け、サイファー・アルマシーとジェイナス・カスケードを打倒したこと。
 互いの正義を賭けて劉鳳とぶつかり合ったこと。
 再会の約束を交わし、鳴上悠と拳を打ち合わせたこと。
 シェリル・ノームと出会い、ギャロウズが愛したという歌声を聴いたこと。
 いい『想い出』ばかりではない。
 白野蒼衣の<悪夢>が暴走し、異形と化した彼がイデア・リーとエミリアを手に掛けたこと。
 蒼衣の悪夢を止めるため、彼を撃つことでしか救えなかったこと。
 悠の死を定時放送で知り、共にいればよかったと後悔したこと。
 正義を貫き通したまま逝った劉鳳に、ヴァージニアの正義が立ち並べなかったこと。
 他にもある。沢山ある。沢山の出会いと別れが、積み重なっている。
 数え切れない膨大な『想い出』は次々と、次々と形になっていく。
「何よ……。何なのよこれはッ!!」
「わたしの『想い出』。わたしの中で息づく、すべての『想い出』。貴方が欲しがっているものよ、ベアトリーチェ」
 我儘を認めてくれない現実に腹を立てる子どものような顔をして、ベアトリーチェは手近にあった『想い出』へ手を伸ばす。
「あぅ――ッ」
 ぱちん、と。
 紅色の鋭爪は、拒絶されるように弾かれる。『想い出』に触れた指先は黒く焼け焦げ、しゅうしゅうと煙を立てていた。
「わたしの『想い出』だって言ったでしょう? これは全部、今のわたしを形作る、たいせつなもの。
 あなたに――ううん、誰にも絶対に渡せない」

 ベアトリーチェが焦げた指先を咥え、憎々しげに睨みつけてくる。
「『想い出』はひとりひとりが歩いてきた証。今までずっと、生きてきた証なの。
 奪っても、盗んでも、それは決して他の人のものにはならないわ」
 歩く。
「楽しい『想い出』も悲しい『想い出』も綺麗な『想い出』も痛い『想い出』も誇れる『想い出』も恥ずかしい『想い出』も」 
『想い出』の中を、歩く。
「みんな、みんなわたしのもの。どれもこれも、わたしだけのもの。
 その全部が、わたしを歩かせてくれている。進ませてくれている。支えてくれている」
 かけがえのない『想い出』に礼を告げるように、歩く。
 立ち止まらず振り返らず、真っ直ぐに歩き、
「辛いことがあっても、悲しいことがあっても、寂しいことがあっても、泣きたいことがあってもッ!
 わたしだけの『想い出』が、いつだって背中を押してくれるッ! 現実を生きる力をくれるッ!」
 シェリルのイヤリングをつけ、プリックリィピアEzを引き抜いた。
 弾倉の銃弾を高速連射する。正確無比な銃撃はすべて、ベアトリーチェへと吸い込まれる。
 だが、通らない。
 未だベアトリーチェの手に在る『悪夢たる想い出』<ピンポイント・バリア>が、銃弾を阻み切る。
「偉そうなことを言っても……所詮はその程度。わたしに勝てる力など、貴方にはないのよッ!」
「わたしにはなくても――わたしたちには、あると信じてるわ」
「おおぉおぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉおォ――ッ!」
 ヴァージニアの『想い出』を越えて、咆哮が迸った。


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