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あと3話で完結ロワスレ

105Memoria Memoria -想い出を求めて- ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/02(水) 19:24:44
「……もう、いいわ」
 悪夢の宴を始めた時に抱いた高揚感はもうない。戦いを始めた時に感じた心地よさもない。
 つまらない。
 だからもういい。殺す。
 首輪を爆発させてやるのが一番簡単だ。だが、それはそれでつまらない。
 せっかくこの手で殺すことができるのだ。
 どうせなら、絶望に染まり死にゆく様をこの手で与え、その瞬間をこの目で見てみたい。
「遊びは終わり。つまらなくなったから――もうお終い」
 拳も術も銃弾も届かない障壁の中でたった一人、ベアトリーチェは両手を掲げる。
 左右掌に浮かぶ星を模した球体を捧げ、慈しむように撫で、奪取した『想い出』を読み込み、神の悪夢を溶かし込む。
「『悪夢たる想い出』――」
 読み取ったのは魔女の記憶。時を操り刻を渡る魔女の秘術。
 それを悪夢で希釈し、夢の世界に刻まれし力に作り替えて。
 回り続ける時計の針に、触れる。
 
「――<時間圧縮>」

 不可視の概念が歪み捩じれ曲がり、吐き気を催すような感覚が訪れ――世界が、制止する。
 あとは適当に『悪夢たる想い出』を展開し、時を再び動かせば終わり。回避も防御も間に合わず、何が起こったのか分からないまま奴らは死ぬ。
 その後のことは簡単だ。
 速水殊子の『想い出』は先ほど蒐集された。残るトトリには、彼女の望む夢を見せてやればいい。
 あとは、手に入れた『想い出』をすべて神剣グランス・リヴァイバーに注ぎ込み、創世は完了となる。
 あっけないものだ。
 何かが達成される瞬間というのは、これほどまでにあっさりとしているのだろうか。
 まあいいわ、とベアトリーチェは頭を振り、さっさと片付けてしまおうと思う。
 これほどの秘術を維持するには、大量の『想い出』を消費する。創世のことを考えると、いたずらに消耗はできない。
 殺すべき対象を、定める。
 忌々しいヴァージニア・マックスウェル。
 粗暴なカズマ。
 目障りで憎いクマ。

 ――こつん。
 
「――えッ?」
 音が、した。
 圧縮された時の中、ベアトリーチェ以外の音源があるはずがない。

 ――こつん。

 聞き間違えることなどあり得ない。
 聞き間違えるような紛らわしい音そのものが、発生し得ないはずなのだ。
 
 ――こつん。

 それでも音は鳴る。
 ベアトリーチェの外から、無遠慮に飛び込んでくる。

「時を操ることができるのが、自分だけだと思ったか?」
 反射的に、声へと意識が傾く。
 そこには、魔術師が立っていた。
 圧縮された時の中で、自らの時を保ち続ける魔術師――ブルーが、立っていた。


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