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あと3話で完結ロワスレ

104Memoria Memoria -想い出を求めて- ◆6XQgLQ9rNg:2013/01/02(水) 19:23:58
 ◆◆
 
 胸を掻き毟られるような不愉快さを感じる。喉が疼くように乾燥する。心がささくれ立ち、余裕を保てない。
 諦観に支配されず抵抗を繰り返す奴らを前に、ベアトリーチェが抱くのは苛立ちだった。
 無様に立ち上がるのはいい。醜く抗うのも構わない。その感情と意志は死の瞬間に『想い出』となり、創世の糧となる。
 それだけなら、不遜に嗤ってやればよいのだ。
 劣勢となったわけではない。それでも、ベアトリーチェは舌打ちを堪えずにいられない。
 愚図なニンゲンどもを叩き伏せているというのに、何一つ面白くなかった。
 原因は、明瞭だ。
 ベアトリーチェという敵を前にしているにも関わらず、奴らの意志はこちらへと向いてはいない。
 彼らは、ずっと。
 役立たずの影<シャドウ>を、ひたすらに気に掛けているのだ。
 気に入らない。
 本当に気に入らない。
 どうして、あいつは。
 影<シャドウ>は、こんなに愛されているのだ。
 理解できない。考えられない。
 だってあいつは影<シャドウ>なのだ。抑圧された人の欲望や本心が集まって生まれた化物なのだ。
 どれだけ愛されたいと願っても、受け入れられたいと望んでも、居場所が与えられてはならないのだ。
 そうでなくてはならない。そうであるに決まっている。
 だって。だって。
 
 ――わたしの声は、いつだって届かなかったッ!
 
 何度だって手を伸ばした。数え切れないほど呼びかけた。
 居場所を求め、愛されたいと願い、想い出に残りたいと望んでいた。
 けれどそのたびに温もりは忘れられ、言葉は弾ける泡と化した。
 どれだけ呼びかけても、手を伸ばしても。
 現実<ファルガイア>を生きる人々には、届かなかった。夢の中の出来事は忘却され、時の流れに押し流されていった。
 人々の『想い出』に、ベアトリーチェは残らなかった。
 それでも諦めなかった。諦めたくはなかった。
 だから、ずっと繰り返してきた。
 人々が夢を見るようになってからずっと、悠久の時の中で繰り返してきた。
 その時間は、あまりにも永過ぎた。星の数にも匹敵する反復は、ベアトリーチェの心を摩耗させた。
 いつからか、ベアトリーチェの目的は変わっていた。
 それはすなわち、現実<ファルガイア>を破壊した後の、創世。
 やることは変わらない。ただし、新世界への憧れが、ベアトリーチェの支えとなった。
 呼びかける。
 手を伸ばす。
 呼びかける。
 手を伸ばす。
 呼びかける。
 手を伸ばす。
 呼びかける。
 手を伸ばす。
 そうやって、同じように繰り返して。
 ベアトリーチェの存在がラミアムに届いた時はもう、すべてが遅かったのだった。 

 ――なのにどうしてッ! どうして、あいつはッ!!

 聞きたくない。
 あいつを呼ぶ声なんて、聞きたくない。
 ここは夢<ベアトリーチェ>の世界。
 なんでも思い通りになるはずの、夢<ベアトリーチェ>の王国。
 そんな場所で、こいつらは、シャドウ風情のことばかりを気に掛け、ベアトリーチェを蔑ろにしている。


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