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何でもいいから名ゼリフをカキコするスレ

1162(´・ω・`) 名前消えた:2006/07/31(月) 10:06:17 ID:1tc9bZno
―――そして、
目の前には見知らぬ誰かの死体があった。

「―――――一人、二人、三人……か」
 口にだして数える。
人差し指で確認したのだが、その人差し指は真っ赤だった。
いや。
俺の両手は赤いペンキを塗りたくったように赤い。
無論、周囲に赤いペンキなどない。
あるのは出来損ないのスパゲッティ(無論、ソースはミートソースだ)にしか見えない、人間の死体が3つ。
 地面には俺の―――七つ夜と刻まれたナイフが落ちている。
「…………つまり、これは」
 考えるまでもないと思うのだが。
「…………俺が、やったワケか」
 ナイフを拾う。
 ……信じられないが、やってしまったものは仕方がない。
 気がつけばあれだけ灼かった体も冷めている。
 用は済んだのだし、さっさと屋敷に帰るとしよう。

「―――――――チッ。誰かくる」
 通路から誰かがやってくる。
 まいった。
 ただでさえここはスパゲッティでごった返しているのに、この上また新しいミートソースをブチまけなくてはいけないのか。

 かつん、かつん、と足音が近づいてくる。
 闇でしかなかった人影が露になる。
「――――――」
 ナイフを握る。
 人影は、路地裏に入ってきた。

 キィィィン、という音。
 ――――信じられない。
 有無を言わさず踏み込んだ俺を、人影は迎撃してきた。
 敵のエモノもナイフ。
 俺たちは互いに、相手の喉元を狙った必殺の一撃を相殺しあった。

「「―――――驚いたな」」
 闇に声が重奏する。
 俺はナイフを仕舞い、敵もナイフを仕舞った。
「戻ってきてみれば同類に出くわすとはな。まったく、殺人鬼なんて初めて見た」
 言って、男は笑った。
 嫌味のない笑み。減量の果てにリングにあがったボクサーが、生涯最高の敵と対峙した時のような、悦びに満ちた笑いだ。
 おそらく。
 俺も、それと同じ笑みをうかべていたのだろう。
「――――ふん」
 男は鼻をならして背を向けた。
 大通りに向けて歩いていく。
「ここいらにするか。大の男が二人、突っ立っているのもなんだろ?」
 道端に座りこむ。
 男は思い立ったように自動販売機まで歩いていった。
「おい、金だせ。金もってねえんだ、オレ」
 こっちも財政状態はよろしくないが、一際大きいコインを投げた。
「一度ぐらいは試してみたかったんだ、コレ」
 嬉しげに言って、男は缶コーヒーを二つ買った。
「投げるぞ」
「あいよ」
 缶コーヒーとつり銭を受け取る。
 男は俺の隣に座って、缶コーヒーを一口飲む。
 ……なんていうか、今日はこんなんばっかりだな、と思った。
「……まず。なんだかなあ、煙草も珈琲もあんまりいいもんじゃねえんだな。なんだってこんなもん口にすんだろうなあ、大人ってヤツは」
「そりゃあ我慢強さを鍛えてるんだよ。大人になったら、まあ色々と大変だからね」
「ああ、なるほど。オマエ頭いいな」
 けけけ、と愉快そうに男は笑う。
 こっちも缶コーヒーを飲んだ。
 ……まったく同感だ。こんな毒物めいたものを飲む連中は自殺願望が多分にありすぎる。
「しかしまあ、なんだね。オマエは酷いヤツだな。いきなり喉元にナイフ突きつけてくるか、フツー」
「よく人の事が言えるな。アンタこそ俺を殺す気だったじゃないか」
「そうだっけ? まあいいじゃんか、昔の事は。お互い命があったんだからチャラにしようぜ」

 ……まあ、確かに。
 お互いが殺し合ったんだから、どちらが死んでいようと結果はチャラだ。
 競技として、差し引きはそれなりに合っている。
 男は不味い不味いといいながら、嬉しそうに缶コーヒーをあおっている。
「……んー、まあこれも慣れれば悪くないねえ。なんていうかさ、世間から外れた不良仲間って感じ」
 男は笑いをかみ殺しながら、そんな事を呟いていた。
「そう? なら煙草にしよっか」
 そのほうが不良少年、というイメージは強い。
「あー、いらね。ありゃ思考を鈍らせる。純粋でありたかったら、毒物は摂らぬが吉だ」
「……そう言いながらもコーヒーを飲んでいる」
「なんだオマエ、殺人鬼のくせに細かいな。人間なんて毒食って生きてるようなもンなんだから、これぐらいはまだ許容範囲じゃないか。オマエだって耐性ぐらいついてんだろ」
 ケタケタと男は笑う。
 まったく同意見なので、缶コーヒーを口に運んだ。


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