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雑談スレ

392無能大佐大総統 </b><font color=#FF0000>(SQQQQQQA)</font><b>:2005/03/03(木) 23:13:59 ID:S03j7Oko
そんな微妙な空気の流れる店に、突然明るい声が響き渡った。
「ただいま、パパ!」
「ああ、おかえり、エリサ」
 レマックが両手を広げると、そこに少女が飛び込んできた。
「娘のエリサだ。エリサ、お客さんに挨拶を」
 少女が振り向く。
「こんにちは」
 手を振ったエドワードを、エリサは大きな目で見つめると叫んだ。
「あ、錬金術師のお兄ちゃん!」
 その一言は、町の者を驚愕させた。
「なんだって、エリサ?」
 一同の前で、エリサは目を輝かせて言う。
「さっきトロッコの塔を倒したあと、このお兄ちゃんが錬金術で直したの見たよ! パアって光って綺麗だった」
 レマックはエドワードを見る。
「…君は…錬金術師なのかい?」
 こんな子供が、と視線が語っていた。
「…まあね」
 隠すことでもないので、エドワードは認める。
「だから研究室に興味があったのかい?」
「そういうこと。まあ、こんな子供が錬金術師なんて信じにくいだろうけど」
 必ず言われる言葉を先に言う。大抵の大人は信じないからだ。だが、町の者は信じない、とは誰も言わなかった。変わりに手をギュッと握られる。
「そうか、錬金術師なんだな! ではぜひマグワール様の研究所へ行ってみないか?」
「え?」
「賢者の石を作るのに、少しでも協力して欲しいんだ。『石』の作り方が分からなければばすぐにやめてかまわない。でも万が一有効なヒントが得られるとも限らないし、一度見に行ってくれないか」
 皆はエドワードの手を次々にギュッギュッと握る。
「こんな若い時分で錬金術ができるんだ。いいひらめきがあるかもしれない。ぜひ行ってやってくれ」
「そうだ、頼むよ」
 盛り上がる皆は、すっかりエドワードに対して友好的かつ尊敬の態度を持って願い出る。
「…どうする、アル?」
「その施設、見れるなら見たいよね」
 二人の旅の目的『賢者の石』について研究しているところなら、なんとしてでも見たいのが本音だ。公開しないのなら、忍び込むしかないと考えていたところである。それが頼まれて堂々と行けるのならそれにこしたことはない。
「分かりました。行きましょう」
 エドワードのやる気に満ちた眼差しに希望を感じ取ったのか、皆は笑顔で盛り上がる。
「若い者の想像力がきっと『石』を作るのにいいヒントを与えてくれるに違いない」
「最近じゃ若い錬金術師が多いのかねぇ。研究室にもいるんだよ」
「へええ」
 エドワードほど若い錬金術師など滅多にいるものではない。ちょっとだけ興味が沸いて聞いてみる。
「その人って、どれくらいの歳なんですか?」
「そうだなぁ…。君はいくつなんだい?」
「オレ、十五歳。こっちのアルフォンスは十四歳だよ」
「ええ!?」
 驚く一同は、エドワードの頭のてっぺんを見、足先を見る。言いたいことは一つだろう。
 その様子を見ながら、兄を怒らせるあの言葉を町の者が言わないよう、アルフォンスは祈った。それが通じたのか町の人はその言葉を言わず、ただ素直に感心していた。
「十五歳かあ…。もっと若く見えたけど」
「ま、でもこれくらいの歳でも錬金術師はいるところにはいるもんだね。研究室にいる人も同じ位の歳だったと思うよ」
 それにはエドワードがちょっとびっくりした。
「へええ」
「ああ、そうだ。まだ名前を聞いていなかったね」
 レマックがコーヒーのおかわりを注ぎながら聞いてくる。それを受け取りながらエドワードは答えた。
「ああ、オレはエルリック。エドワード・エルリックだ。こっちはアルフォンス・エルリック…」
 そこまで言った時だった。空気が一変した。
「…なんだって?」
 錬金術を知っている者なら、その名前も耳にしたこともあるかもしれない。エドワードにとって、有名な国家錬金術師エルリック兄弟を名乗って驚かれるのは当たり前のことだった。だから、気にせずもう一度言う。
「エドワード・エルリックだよ」
 だが、驚きの声は聞こえなかった。代わりに耳にしたのは弾けるような笑い声。
「わははははっ!」
 皆は思い切り笑う。
「エドワード・エルリックだって? エドワード様の名を騙るとはなぁ」
「坊主達、嘘をつくにもそりゃあ背伸びしすぎだって」
「ぼ、坊主ぅ?」
「エドワード様は国家錬金術師だものな。君たちが憧れるのも無理ないが嘘はいかんぞ」
 エドワード様、と彼らは言った。まるで知り合いのように。
「は? なに言って…」
「ああ、笑わせてもらったよ。で、本名は?」
「なに言ってるんですか? ボクたちは本当に…」
「もういいって。本名はなんだい?」
 誰も信じてくれなかった。訳も分からず、何度もエルリックと名乗るだけだ。
 だが、やがて町の者は呆れたような顔になり、そのうち言うことを聞かない子供を咎めるような目つきになった。


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