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雑談スレ

390無能大佐大総統 </b><font color=#FF0000>(SQQQQQQA)</font><b>:2005/03/03(木) 23:12:49 ID:S03j7Oko
 レマックはそれに気づいて、明るく言い放つ。
「ま、細工の腕だけじゃなく、料理の腕も磨かなきゃいかんしな。忙しい毎日さ」
 それを聞いて店にいた町の者も、続ける。
「レマックの料理が上達する頃には、金がまた出てくるさ」
「そうさ。金脈に辿り着く前に、マグワール様の研究が成功するかもしれん」
「そうだといいがなぁ」
「なに言ってんだ。もうちょっと辛抱しようじゃないか。また目をみはらせるような作品を作りたいだろう」
 皆が壁の図面を見上げながら話す言葉の一つを、エドワードは聞き逃さなかった。
「マグワールさん?」
「ああ、ここの金鉱の管理人だよ。ほら、あそこにでかいお屋敷があるだろう。あの家に住んでる」
 山の手前に、高い塀が見えた。だが門らしき扉は堅く閉ざされ、中を窺うことはできない。
「へえ。でっかい家ですね。金鉱の管理人ってのはよほど儲かるんだ」
「ここの金脈をまっさきに商業化した人だからね。だが、今は金の産出も少ない。苦しい状況は一緒だ。研究が成功すれば復興もするさ」
「その研究って?」
 何気ないふりをして聞いているが、エドワードはその返事に集中する。
「ああ、金を掘るだけでなく、無限に作り出せるものを研究している。『賢者の石』というらしい」
 レマックが答えた。
 エドワードとアルフォンスはさっと視線を合わせた。
 二人の望むキーワードが出てきたのだ。勢い込んで問い詰めたいが警戒されるのは避けたい。二人ははやる気持ちを押さえて、レマックの話に耳を傾けた。
「…君たち子供には分からないかもしれないが…。錬金術は知っているだろう? その錬金術の研究を進めるとそんな『石』ができるらしいんだ。相当な学が必要だから、詳しい理論も完成するかも私たちには分からないがね」
「きっと成功するさ」
 別のテーブルで話を聞いていた男が同意する。他の者も皆うなずいている。全員が、その研究に期待をしているのだ。
 だが、皆の明るい声を遮るように、端の席から低い小さな声が聞こえた。
「…無理じゃないか?」
 皆は一様にそちらに顔を向ける。
 誰だろう、となんとなく振り返ったエドワードたちと違い、他の者はきつい表情を浮かべて睨んでいた。
 テーブルでスープを飲んでいるのは、レマックと同じかそれ以上の歳に見える、がっちりとした体格の男だった。ごつごつした手がスプーンを置く。店内に向けた顔はよく日焼けしていた。
「…『賢者の石』だかの研究をしてもうどれくらいになる? 何人もの錬金術師を雇って研究室にこもっている間に、町は荒れていく一方だ。それなのにまだ金に執着し続けるのか」
 低く響くその声に、何人かが語気荒く立ち上がった。
「俺たちは誰にも負けない金細工を作ってきたんだぞ。ゼノタイムの金装飾品と言えば、誰だって感嘆の声を上げる。その腕を簡単に他のことに使えるものか!」
「そうだ! 新たな金脈の目星はついてるんだ。研究室には優秀な錬金術師を迎えている。できないはずはない! ベルシオ、お前は金細工の腕だって大したことなかったから簡単に諦められるのかもしれないがな、オレたちは違うんだ!」
 ベルシオ、と呼ばれた男はゆっくりと立ち上がると、怒気を含んだ空気の中で一人静かに言葉を紡いだ。
「金脈を探すのはいい。だが、実際は、ひたすら岩を削って放り投げてるだけだ。研究だってできるならやればい。だが、無いお金をはたいてまで協力する義理はない」
 そう言うと、食事代を置いて出て行ってしまう。残された者たちは怒り心頭と言った体で口々にベルシオの言葉に反論し出した。
「苦しい状況なのは、町中一緒なんだ! だからこそ皆でマグワール様の研究資金を出し合ってるのに、ベルシオの奴ときたら…!」
「今までだって多くの錬金術師に協力して貰ったし、きっと金を生む『石』はできる。そしたらまた皆で細工の腕を競える!」
「…だが、そろそろ違う道も考えないと…」
「なんだって? その腕を捨てるのか?」
「捨てたくはない。だか、息子の具合が悪いし、違う仕事を探して引っ越そうとも考えてるんだ。ここにいても仕事はないし」
「だからそのために…っ」
「まあまあ」
 暗い雰囲気に皆が飲まれる前に、手を叩いたのはレマックだった。


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