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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

929鳥頭 ◆.4U5FmAuIw:2017/05/20(土) 18:31:06
>>287
ありがとうございます!
流しそうめんは初見で吹いたのでお気にのネタでした。


頭の中、いやな笑い声が響いている。ふらふらと歩く後藤の肩に、向かいから
歩いてきたガラの悪そうな男がドンッとぶつかって「いってえな」と睨みつけた。

「……」

光のない瞳で、後藤はまた歩き出す。その肩を、男は「おい!」とつかんだ。

瞬間。

「え?…あ、あっ……うわ、あああっ!!」

ぐりんっ、と男の視界が反転した。180cmごえの巨体がバキィッと歩道に叩きつけられ、
アスファルトが割れて砕け散る。後藤のつかんでいる手首が、ミシミシと嫌な音をたててきしんだ。

「きゃあああ!!」
「警察っ…だれか、警察呼べ!!」

ざわめく通行人。その中を歩いて行く後藤の周りに、またチリッと青い電流が走った。


【宿命の糸はつかの間の夢に繋がれて(後編)】



青白い画面に、次々に座標が映し出される。藤井はその中で、不規則な点滅を繰り返す座標に
マウスポインタを合わせて「これです」と見せた。

「"スペクトラム"か……まさか、またお目にかかるとはな」

髪をかきむしって、上田が苦々しげにつぶやく。

「完全に石を制御できない、能力者のなりそこない……それをスペクトラムと呼んだ。
 奴らは厄介なことに、石を持たねえ普通の芸人との境界線のあたりを、
 ふらふらと行き来する。つまり、歩く災厄ってわけだ」

ラバーガールの飛永が、「歩く災厄……?」と上田の言葉を繰り返す。

「スペクトラムは、"代償"がない。奴らは自分の意思に関係なく、無制限に石の能力を引き出し、
 周囲にまき散らす。ひとしきり破壊し尽した後は……たいていは」

上田は一瞬言葉を切った。

その先はとても残酷な結末だ。

――石に自我を食われた、ドールになる。

若い飛永に聞かせたくはない。

「……知らねえな」

そっぽを向いた上田に、飛永はそれ以上聞かなかった。


◆◆◆◆◆

「やっと見つけた……」

菅の視線の先で、後藤が歩いていた。
すぐ横を走り抜けるトラックにも、足元から逃げる鳩にも注意を払うことはない。

「っ、危ない!」

赤信号も今の後藤には分からないのか、ガードレールを乗りこえて出る。
手を伸ばした菅は、バスが近づいてくるのに「もうあかん!」と思わず目をつぶった。

キキーッ!!

道路を横切る後藤すれすれの所で、バスが急停止した。

「よ、よかった……」

へなっとその場にへたりこんだ菅は、あわてて後藤を追う。立ち上がった後藤は、今度は
電柱にゴチンッと頭をぶつけて、一歩、二歩と下がって、また転んだ。

「……あ……」

水たまりに映った、表情がない顔、焦点の合わない瞳。しばらくそれを見ているうちに、
後藤の目にすっと光が戻った。

「お、俺が……俺が、やったんやない……」

カタカタと震える手で、頭を抱える。

「ちがうっ……俺が悪いんやない!俺はっ……!!」

ふらりと揺らいだ体が、地面に倒れこんだ。
駆けよった菅は、呼吸があることにホッと胸をなでおろす。

「力尽きたか……せやけど、後藤さんがスペクトラムやなんて聞いとらんかったな。
 とりあえず運んで、久馬さんから直接聞き出すか」

菅は後藤の手をとって「今ごろ宇治原が久馬さんを捕まえとるやろ」と呟いた。


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