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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

924鳥頭 ◆.4U5FmAuIw:2017/05/13(土) 19:02:02

「俺は何もしてないって、言うとるやないですか!」

ドアノブに手をかけると、後藤が必死に弁解する声が聞こえた。
部屋の中に入る。後藤のマネージャーが近づいてきて「すいません」と頭を下げる。


「あの人ら、吉本の偉いさんか?」
「はい……もう後藤さんをクビにする気満々で……久馬さん、元相方のよしみで
 力をお貸しいただけないでしょうか」
「それはええけど…あいつ何しでかしたんや」

ひそひそと話し合う俺たちの向こうで、お偉いさんはため息をつく。

「せやけどな、スタッフもその場にいた芸人もみんな、後藤くんが電気のコードつかんでるの
 見た言うとんのやで」
「俺は電気いじったりなんかしてません!」
「劇場が半壊したんやで、直すのに何百万かかる思てんねん。警察行かんだけでも感謝してほしいもんやわ」


口調こそ優しいが、上役からは静かな怒りが見える。


「俺はッ…俺は、ほんまに何も知りません……気がついたら、電気のコードに、なんか、
 火花みたいのが……信じてください!」


それを聞いた久馬の目が、驚きに見開かれる。

「俺は何もしてません!もし、俺がやったとしても……絶対わざとやないです!」
「後藤!」

マネージャーを押しのけて後藤の手をつかんだ久馬は、「すいません」と上役に頭を下げた。


「この話は後日改めてお願いします……帰るで」
「えっ?ちょ、ちょっと!」

ずるずると引きずられていく後藤を、マネージャーと上役はあっけにとられた顔で見送った。

_____________


外に出たところで、後藤は「離せや!」と手を振り払った。

「だっ…だいたい、なんでお前来てん!仕事あるやろ!」
「……後藤」

いつもとは違う、久馬の静かな声。後藤は思わず口をつぐんでその目を見つめ返した。

「気がついたら火花が出とったいうのは、ほんまか」
「ほっ、ほんまや!……まさか、お前まで」
「安心せえ。俺は絶対に、お前を疑ったりはせん」

久馬は後藤の肩をつかんで、首を横に振る。

「今回が初めてか。それとも今日みたいなことは、前にもあったんか?」
「前にも……って」

どう答えればいいのか分からず、後藤は混乱している。
久馬は「らちが明かん」と髪をかきむしると、後藤のまぶたに手をそえて「ちょっと見せろ」と上げた。

「っ、離せっ、アホ!」

どんっと体を押されて、久馬は苦しげな息を漏らす。

「お前にっ…、面倒かけるようなことにはせえへん」
「後藤ッ……!」
「お前はお前のことだけ気にしてればええんや!」

そんな捨て台詞を吐いて、後藤は走って行ってしまった。
置いて行かれた久馬はベンチにもたれかかると、そのまま座りこんだ。

「くそっ!」

いつもかぶっている帽子を取って、裏に貼りつけてあるものをペリッとはがす。
黒い石は、まだかすかに光を放っていた。

「まだや……まだ間に合う……俺は絶対に、お前を」

再び顔を上げた久馬の瞳には、強い意志が宿っていた。


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