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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

877Evie ◆XksB4AwhxU:2016/01/29(金) 22:56:24

【Irony of the fate-4-】


「……小林」
「はい」
「俺はまた分かんなくなっちゃったよ」
小林はノートから目を上げて、窓の外を眺めている設楽の背中を見つめた。
「俺さ、土田さんには感謝してるんだ。あの人が“みんなを黒一色に染めればいい”って
 言ってくれた時、自分の道が見えた気がした。ああ、これでいいんだって思えたんだ。
 俺のやってることは間違ってない、きっといい結果になるはずだ。ただそう信じてればよかった。
 ……なのに、石塚が全部台無しにした」
無意識に握りしめていたであろう拳をそっと解いて、設楽は振り向いた。
「俺は、ピエロだったのか?」
「ある意味では、そうかもしれませんね」
小林の答えは、肯定でも否定でもなかった。言外に、それは設楽が出すべき答えだと告げている。
「……無理。俺、もう戻れる気がしないもん。それにさ、俺が立ち止まったら、
 黒の奴らはどうなっちゃうわけ?俺が諦めちゃったら、石に潰されちゃうんじゃないのかな」
「賽の目は投げられた、ということですか」
「そうだよ。これはゲームじゃない、戦争なんだ」
「対馬さんのような芸人は、もう現れないと?」
「一人の聖者でどうにかなるような、甘いもんじゃない。少なくとも俺はそう思ってる。
 たとえ白を潰したところで、まだ大きな敵はある。
 俺は俺の目的があって、黒にいたはずで……
 だけど、それがこの頃ぶれてきてるような気がするんだ」
「石塚くんのせいで?」
「ん、多分その感情は、俺の中に永久凍土みたいにあったんだ。
 今までも色んな人がそれを溶かそうとして、叩いたり削ったりしたんだけど、ダメで。
 さうがにもう来ないだろうと思って安心してたら、
 石塚がやってきて、ヒビが入ったそこを、カナヅチで一回だけ叩いたんだ。
 そしたら、嘘みたいにガラガラ崩れて、中にあった本音が見えた。そんな感じ」
「……それで、今はどんな気持ちなんですか」
「だから、それが分かんないんだって」
設楽はソファに座り直して、テーブルの上に広げられた大学ノートに視線を落とす。
自分にはパソコンのプログラムのようにしか見えない記号の羅列も、
小林の眼球を通せば一人前の日本語に変換される。同じことだ、と設楽は思った。
「石塚にとって、俺は守るに値する相手だったのか?」
「身を挺して庇ったということは、そういうことでしょう」
「バカだね、あいつ」
設楽は前髪をぐしゃっとつかみ、滅茶苦茶にかき混ぜて、また呟いた。
「……バカだ、ほんと」


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □

白ユニットが本部として借りている、都内のアパートの一室。
本日の風速、3メートル。開きっぱなしの窓から吹きこんできた風が、ふわりとカーテンを揺らす。
小沢はそっと中の様子をうかがった。
「どう?」
井戸田の問いに、黙って首を横に振る。
「そうか……でも、あのまんまじゃ石井さんが弱っちまう。なんか手がかりはないのか」
「あくまで憶測の域を出ないんだけど」
小沢がためらいながら続ける。
「眠ってるのはプラチナクォーツの方なんじゃないかな」
「……えーと、それはつまり……プラチナクォーツが回復のために眠ってるから、
 持ち主の意識も沈んでるってわけか?」
「嵯峨根さんから聞いただろ。ほら、松本ハウスの話。
 相方の分も代償を支払って、丸一日目覚まさなかったって。
 石塚さんは欠片の所為でずいぶん無理な使い方してたみたいだしね……
 限りある石のパワーを強引に引き出してたんだから、負荷も大きいんじゃないの?
 あとは、パワーをぶつけられた反動とか。石同士の力がぶつかり合うと
 不思議な現象が起こるのは、身をもって確認したし」
「なるほどな……」


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