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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
875
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/12/25(金) 19:14:57
真っ暗な空間に、スタンドマイクだけが立っている。小さな扇のついたそれは、間違いなく『アレ』だ。
石井は一歩ずつマイクに歩みよって、その前に立つ。するとまた、どこかから声が聞こえてくる。
『不安だ』『どうしよう』『石井さんは俺なんかで本当にいいのか?』『ちゃんと役に立ってんのかな』
石井はまた耳をふさごうとして、やめる。石塚の声はしばらく沈黙した後、焦りからいらだちを孕んだものに変わった。
『くそ、何で俺だけこんな不安になんなきゃいけねえんだよ』『“じゃない方”?ふざけんな、俺だって一杯一杯で
頑張ってんだよ』『周りの奴らも、好き勝手言いやがって。だからクソだってんだ』『ほっといてくれよ、もううんざりだ』
「……なんだ、結局来ちゃったんだ」
いつの間にか、石塚が隣に立っていた。
「ここは何だ、君の心の世界か?それともプラチナルチルの中に残った記憶か?」
「さあ……俺にも分かんない。お前に見せたくねえ部分だったのは確かだよ。黒の欠片のせいでちょっと
漏れちまったけどさ。設楽の言葉を借りるんなら、“誰にでもある”らしいけど。石と芸人は一心同体っていうんなら、
この世界も説明がつくだろ」
「なら、さっきのあれが君の本音だと?」
「いや……多分、どっちも本当なんだよ。お前が普段見てる俺も、ここにいる俺も」
石井は頷いて、手を差しだした。不思議そうに首を傾げた石塚の手をとって、ぎゅっと握る。
「いつか、コントで言っただろ。人生で大事なことは、“一人じゃない”ってことだ」
石塚はおずおずと、石井の手を握り返した。
「僕がいて、君がいて。それでやっと“アリtoキリギリス”になるんだ。だから、気にするな。
どんな形でも、誰が何を言っても、僕らの道は一つだ」
その言葉を告げた瞬間、まるで芝居の明転のように、あたりが真っ白になった。
思わずぎゅっと目をつぶるが、石井はふと恐ろしいことに気づいた。
握っていたはずの手の感触がない。いや、自分の手は何かやわらかいものにめりこんでいる。手首を、温かくどろりとした
液体がつたう。石井の耳に、「カハッ」と何かを吐き出す音が届く。恐る恐る目を開けた石井は、目の前の光景に悲鳴を上げそうになった。
「い……石井、さん……」
設楽を庇うように前に立った石塚のみぞおちのあたりに、石井の拳が深々とめりこんでいる。胸骨が折れて内臓を傷つけたのか、
苦痛に呻く石塚の口からは鮮血がこぼれ落ちていた。あわてて拳を引き抜くと、支えを失った体が倒れこんでくる。
「あ……僕はっ……僕は、何てことを……おい、しっかりしろ!目を開けろ!」
石井は肩を貸して立たせようとしたが、力が入らないのか体重がもろにかかってくる。砂利を踏む音に顔を上げると、
少し青ざめた顔で設楽が近づいてきていた。伸ばしてきた手をぱしんと払って、石塚の腰に手を回し支える。
「大丈夫だ、さっき……電話で、呼んだから……」
なんとか立ち上がらせて、半ば引きずるように歩き出す。ルチルクォーツの発動時間が、もうジリ貧だ。撃たれた傷口がまた開いている。
「……石井さん」
小さく呟かれた声に、石井の足は止まった。ずる、と石塚の体がずり落ちるのを支えてやると、焦点の合わない目で石井を見つめてまた呟く。
「 」
石井は膝をついて、口元に耳を近づける。石塚は何事かつぶやき終わると、ぐったりと地面に倒れた。
壁に背中をつけて、力なくずり落ちるのと同時に、誰かが路地に入ってきた。その人物は倒れた石塚を見て、慌てたように抱き起こす。
「……何、やってるんですか」
責めるような声音だった。石井は顔を上げて、浅越をぼんやりと見る。
「まだ大丈夫ですよ!あなたがそんな、諦めたような顔してどうするんですか!!」
言葉の意味がわからず、しばらく呆けたように座りこむ。その間に浅越は石塚の傷口に手をかざした。
やわらかい光が傷口を覆って、苦しそうだった石塚の表情が徐々に穏やかなものに変わる。しかし、「これで大丈夫……」と笑った浅越は、
傷が塞がっても倒れたままの石塚を見て笑顔を消した。
「……え?」
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