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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

865Evie ◆XksB4AwhxU:2015/12/07(月) 19:07:04
「ここなんですけど。テーブルの高さと合わせてみても、ちょっと低いように見えるんですよ。
 せいぜい170ぐらい。ラバーソールとかで高く見えることはあっても、縮むってのはありえないですよね。
 あるはずの傷がない、身長も低い。ということは」
「これは、石塚くんじゃない」
石井はその場にへたりこみそうになったのを、なんとかこらえた。安心と同時に湧き上がるのは、気が立っていたとはいえ
こんな簡単な偽物に騙された自分の不甲斐なさ。
「そう、別の誰かなんです。問題はどうやって同じ見た目で声まで再現できるか……なんですけど、黒にも変身系の能力者がいるとしたら、
 簡単に説明がつくと思いませんか?」
「変身……」
「何人か知ってるんですよ。たとえば写真にキスをしたら被写体の顔をコピーできるとか、特徴のある人間にだけ変身できるとか。
 最後に一つだけいいですか」
小沢は流暢に回る舌とは反対に、おずおずと聞いてきた。頷くと、「石塚さん、最近髪染めたのいつか分かります?」と聞いてくる。
「えーと、たしか……今月の頭に美容室行ったとか言ってたな。この動画の日付の、そうだ。2日くらい前……あっ」
石井は合点がいったのか、手を叩く。
「2日で色落ちなんて、ありえませんよ」
「そうか、首から上……顔と声だけしかコピーできないのか」
「あくまで想像ですけどね。それなら身長が違うのも納得いきます……石井さん?」
何もかも聞き終えると、石井は小沢からケータイを奪いとった。床に落として、カラカラとその場で回るケータイを、思い切り踏みつける。
ぐしゃっと潰れて部品がいくつか飛んだ。
「い、石井さん……」
小沢が顔を引きつらせているのにも構わず、ゴキブリでも叩き殺すようにガンッ、ガンッと何度も踏んで、完全に破壊する。
はあ、はあと肩で息をしながら、無残に潰れたケータイを見つめる石井の目は、今まで誰も見たことがないほどの怒りに満ちていた。

「退屈、だな」
そう呟く石塚の目の前には、血を流して倒れる男達。その中の一人が「うう……」と唸って、動かない体を引きずり逃げようとする。
その背中を踏みつけて動きを止めてやると、「ぐえっ」とカエルが潰れるような声を出して動かなくなった。
もう一発撃ちこんでやってもいいかと思ったが、思いとどまる。石塚はその背中から足を離さないまま、ククッと笑った。
「昔さあ、ライブで後輩の頭踏んだことあってさ」
倒れている中には、白でそこそこ名前が知れた芸人もいたようだが、思い出せない。
「こう、ちょうどこいつみたいに倒れてんだよ、その後輩が。で、靴の下に頭蓋骨の感触があって。悪いことしたなーとか、
 このままちょっと力込めてみたら潰れるんだろうなとか、一瞬だけ考えた。
 ……やってたらここにいねえよ、バーカ」
おびえた目で自分を見ている白の芸人を蹴り飛ばす。地面に転がってゲホゲホと咳き込むのを、笑いながら眺めた。
「でもさ、そういう考えが浮かぶのが人間ってもんだろ。だから、黒はそれを否定しない」
やっと呼吸が落ち着いた男の前にしゃがんで、ポケットから黒の欠片を取り出す。それの意味する所を知っている男は
首を振って拒絶したが、石塚はその口に指を突っ込んで開かせ、口を塞いで飲ませる。
『早くしろ、指突っ込んで無理やりこじ開けられてえのか』
あの時の大竹の目は本気だった。まさか自分がそれをすることになるとは思わなかったが、それもまた運命というものかもしれない。
石塚はうっすらと笑って、ここにはいない相方に向けて呟く。
「……だからさ、お前もこっちに来いよ」

なあ、石井?


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