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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
857
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/12/02(水) 16:27:46
真っ暗な劇場の中、手探りで歩く。石塚はサマーコートのポケットに手を突っ込んで、中にあるプラチナルチルの感触を確かめた。
観客席の通路を通り抜けて、ステージ脇の階段に足をかける。徐々に闇に慣れた目に、ステージ袖のドアがぼんやりと浮かび上がるのが見えた。
『__終わった後、劇場で待ってます』
昼間、廊下ですれ違った土谷が、耳元で囁いた一言。振り返った時にはもう土谷は角を曲がって見えなくなっていた。
この前休憩所で聞いた話とあわせて報告すると、ケータイの向こうの設楽は
『いいじゃん、ステージに上がりなよ。お前が主役だ』と笑った。何か引っかかるものを感じたが、行かないことには始まらない。
石塚はマネージャーからななめ45°の出演する劇場を聞き出し、すべてのプログラムが終わった後にこうしてやってきたのだった。
「土谷……土谷、いないのか?」
ステージには誰もいなかった。石塚は一人芝居でもするように真ん中に立って、あたりを見回す。
もしかしたら楽屋にいるのかもしれない。土谷は劇場、とはいったが、ホールにいるとは言わなかった。
石塚はしばらく立ち尽くしていたが、やがてステージ袖に向かって一歩踏み出す。
瞬間、バンッと叩きつけられるような音と共に、まぶしい光が石塚の視界を覆った。反射的に顔の前に手を出した石塚の耳に、
聞き慣れた、だが絶対に聞きたくなかった声が届く。
「……いつか、僕は言ったね。君との間に隠し事はしたくない、と。だから僕は君に何もかも打ち明けた。
でも、君は僕に何も話してくれなかった」
石塚の姿を照らしだしたのは、二階部分に設置されたスポットライトだった。目が光に慣れてくるのを待って、手を下ろす。
静かなホールに、男にしては小さく軽い足音が響く。それは徐々に近づいてきて、ステージのすぐ下で止まった。
「僕は君の全てを知っていると思っていた。でもそれは間違いだった……いい加減、顔を見せたらどうなんだ。石塚君」
石塚はその言葉に、観念したようにフードを脱ぐ。石井の後ろにいた小沢は、まだ信じられないのか首を振って目をそらした。
そんな相方を、井戸田がそっと後ろに押しのけて前に出る。
「……すいません、石塚さん」
待ち焦がれていた声のした方角に視線を向けると、観客席に隠れていた土谷が、そっと出てくる。
よく見ると下池はステージ袖に、岡安はスポットライトのところで石塚を見つめていた。
「俺達、前に黒に引きずりこまれていたのはお話しましたよね。だから、どうしても……ほっとけなかったんです」
「嘘、だったのか」
石塚のつぶやきに、石井は眉をひそめた。
「嘘つきはどっちだ」
その言葉に、石塚のみならず全員が固まる。小沢は早くも石井を作戦に引きこんだ事を後悔した。
「君は石を持っていない、と嘘をついた。僕が疑わないのを知っていて。そして……深沢さんを半殺しの目にあわせた」
「そ、それは……」
「僕のためだった、とでも言うつもりか。君は僕が無事で済むなら誰かを傷つけてもいいのか?いくら黒の欠片を飲んでいたからって、
それが言い訳になるとでも思ったのか?」
ため息をついた石井が前髪をかきあげる。先輩に黙って、とも言えず土谷は成り行きを見守った。
(石井さん、何考えてんだ……あの人を責めたって意味ないだろ!)
井戸田は腹の中で舌打ちすると、これ以上石井が言葉を発する前に止めようと前に出る。しかし、もう遅かった。
「君がどんな見返りを約束されたかは知らないが……今の君にとっては、僕ですらその他大勢と同じなんだな」
石塚はややあって、「……どういう、こと?」と消え入りそうな声で一歩前へ出る。
「自分の手を汚したくないから、黒の若手を差し向けるなんて……これがなかったら、僕は君を許していた」
「えっ……何、言って……石井さん……俺、そんなこと」
縋るように伸ばした手は、怒りのこもった鋭い視線にはねのけられた。
「嘘だと思っていた。いや、思いたかった。これを見なかったら……何もかも、なかったことにできたのに」
石井の手にあったのは、昨夜男のポケットから拝借したままの赤い折りたたみケータイだった。ピ、と再生ボタンが押される。
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