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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
854
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/11/27(金) 19:06:52
設楽は移動中の車内でケータイを開き、声は出さずに笑う。
「約束、ね……俺もずいぶんと買いかぶられたみたいだ」
隣りに座る日村が「何の話?」と聞いてきたが、「関係ないでしょ」とはぐらかすと、それ以上は食い下がらなかった。
この程よい距離感を、都合がいいと思うかそれとも心地良いと思うか。それが白黒の分かれ目だろうと設楽は考えている。
(しかし、こんなメール送ってくるってことは……あいつ、まだ俺を甘く見てるんだな。
そこに致命傷をつけるのは石井だ。それでやっとあいつは“完成”する)
設楽は窓を少し開けて、外の景色が流れるのをぼんやり眺めた。
思考がどんどん鈍くなっていくのが分かる。石塚はこめかみをおさえて、頭痛をやり過ごした。親指の爪を強く噛むと、
痛みで思考が一瞬だけクリアになり、休憩所で話すスピワの会話が耳に入ってくる。
「……やっぱり、石井さんに協力してもらおう」
「だめだ」
「なんで!」
小沢が思わず叫ぶと、井戸田は唇に人さし指を立ててあたりを見回した。人の気配がないと分かると、
拳を握りしめて睨みつけてくる相方に近づき、ワントーン低い声で囁く。曲がり角に隠れて盗み聞きしている石塚は、心の中で舌打ちした。
「石井さんに、冷静な判断ができるとは思えない。……相方だぞ?俺らだってあんなにショック受けたのに、
10年以上も一緒にいる人ならなおさらだろ。俺らでなんとか解決しよう」
「相方だからこそ、目をそらしちゃダメだ!」
「だから、大声出すなって。……分かったよ、小沢さんがそこまで言うなら止めない。石井さんも加えよう。
ただ、石井さんも最近疲れてんのかな、なんかイライラしてるみたいだし……」
スピワの二人は話しながら歩いて行った。声が遠ざかると、石塚はそっと角から出てタバコを口にくわえ考える。
(俺の仕事は、ホリプロの中の“白”の動きを探る事……なんだけど)
煙を吐き出すが、空気を吸っているように味気ない。ふと、ポイズンの吉田が「黒の欠片は感覚を鈍らせる」とぼやいていたのを思い出した。
(……ぶっちゃけ、俺をなんとかしようとしてるとしか報告しようがないもんな。
浄化してもらうのが一番いいんだろうな、でも)
ポケットからプラチナルチルを取り出して、ぽーんと空中に放ってキャッチ、を繰り返す。
(そしたら、俺がついた嘘もバレる)
設楽がどんな地図を描いているのかは知らないし、知る必要もない。自分にとって大切なのは石井の存在。
深沢は優しく手を差し伸べた。それを台無しにしたのは自分。深沢より厳しい石井はきっと、自分を完全には許さないかもしれない。
石塚がその可能性に思い至った瞬間、手先がわずかに狂った。
「あ」
キャッチし損ねたプラチナルチルが、床に落ちてわずかにはね返る。転がった石を拾おうと屈んだ瞬間、石塚の脳裏に半年前の光景が蘇った。
【2004年.11月】
財布から小銭を取り出そうとしたはずが、寒さでかじかんだ指は石塚の意図に反して変な方向に動いた。
「あっ」
小銭入れの中に入れておいたプラチナルチルが、指で弾かれて床に落ちる。石はあっという間にころころと転がって見えなくなってしまった。
かがんで床を探ると、ひょいっと誰かの手が視界に割り込んでくる。顔を上げると、「これ、お前の?」と日村が石を差し出していた。
「お前のだよな、落としたの俺見てたもん」
日村は石塚の手に石を握らせる。立ち上がりズボンについたホコリをぱんぱんと払うと、くるりと踵を返して片手を挙げた。
「じゃ、もう落とすなよ」
石塚が礼を言おうとすると、気配で分かったのか「いーって」と黙らせた。そのまますたすた歩いて行ってしまうのを見送って、
プラチナルチルを小銭入れにしまい直す。
「……知らない、のか?」
首をひねったが、結局のところ日村の立ち位置は分からなかった。
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