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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

841Evie ◆XksB4AwhxU:2015/11/22(日) 19:04:45
「あー、せめて石が奪れてたらな……こりゃ、怒られるかも」
坊主頭を撫でて、トシが空を仰いだ瞬間。
「こっち!」
ぐいっと、トシの手が引かれた。包帯が巻かれた手の先を見ると、雑居ビルの地下に続く階段から、誰かが二人を手招きしている。
トシは一瞬ためらったが、タカを連れて階段を下りた。男は懐から懐中電灯を取り出して、ぱっとあたりを照らしだす。
男の名前を思い出すのに、トシは若干のタイムラグを必要とした。
「石塚さん、ですよね」
「助かったー!」
タカは同じ黒の助っ人にもう気を許して、ずるずるとその場にへたりこむ。トシはややイラッときたが、怒るのも大人げないので黙っていた。
「そんなに喜ばれると、なんか複雑だなー」
「え?」
「俺も点数稼がないとやばいからさ」
わけがわからない、と首をひねるタカには構わず、石塚はポケットから四つ折りになった白地図を取り出す。
左手に持ったボールペンをノックすると、トシを見上げた。
「あ、石は奪ってきた?」
「……いえ、片方はとれたんですけど」
「けど、何?」
「……物質転送系の能力なんですよ、取り零したほうが。だから、こうやって逃げてたんです」
トシが肩を軽く回しながら答えると、石塚はしばらくうーん、と考えていたが、やがて思いついたのか、ペン先を地図に落とす。
ペン先が青い光を放ち、みるみるうちに地図記号が書かれる。
「よし、できた。行こう」
石塚は地図を畳むと、地上への階段に足をかけて、また二人を手招きした。

一方、タカトシを追いかけていた白の二人は、目の前の光景を唖然と見つめていた。
地下道から出た先にそびえ建っていたのは、電線でビルから繋がれた鉄塔。周りに張り巡らされたフェンスには『高圧電流注意』と
赤い文字の板が下がっている。
「ど、どうなってんだこれ……」
「こんなとこに鉄塔なんてあったか?」
勇敢にも一人が歩みより、フェンスに指をかける。が、彼は忘れていた。自分は今、石を奪われて全くの無防備だということを。
「……ぐ、あっ!」
パンッと乾いた破裂音が響き、男の体が揺らめく。肩を抑えてその場にうずくまる相方に、思わず駆け寄ろうとしたもう一人は、
上から聞こえてきた声に踏みとどまる。
「じゃあ、先に謝っとくね」
石塚は、バスケボールに変身しておいたトシを胸に抱えて、語りかけた。男はチョーカーについた石を握りしめて、
鉄筋のハシゴ部分に左手をかけて立つ石塚を、はっきりと視界に映す。
「……外したら、ごめん」
「えっ、石塚さん……ちょっと待って!」
タカがやや青ざめた顔で叫ぶ。
「な、なんだあの人……仲間じゃないのか?」
白の追手二人も、鉄塔の上で言い争う二人をぽかんと見つめる。
「大丈夫、俺ドッジボール得意だし」
「そういう問題じゃなくて!」
「死んだらごめんな、葬式には行くから!」
言うなり石塚はトシを軽く振りかぶって、眼下の男めがけて投げる。
「うわ、マジで投げた!」
男は頭の上に迫り来るボールに、慌てて発動対象を変更した。チョーカーの石がぱあっと青い放射光を放ち、
ボールの形をしたトシが一瞬にして空から消え去る。やがて背後から聞こえた、がさがさと茂みが揺れる音に、追手二人はほっとため息をつく。
「死ぬかと思った……」
坊主頭に葉っぱを乗せて出てきたトシに、男は思わず笑みを見せた。直後、カチッと何かを回すような音がする。
男は、油をさしていないロボットのようなぎこちない動きで振り向く。直線上に立つ石塚は黒々とした銃口をまっすぐに向けて、
唐揚げをねだる時と同じように手の平を差し出した。
「石、ちょーだい」


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