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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

839Evie ◆XksB4AwhxU:2015/11/22(日) 19:03:46

「やり方がスマートじゃないな」
すべてを話し終えた時、石井の口から出たのはそんな冷静な言葉だった。しかし、心のなかでは思考が錯綜しているのか、
彼にしては珍しい小刻みな貧乏揺すりをしていた。
石井は頭を整理するためか、屋上の柵にもたれかかって腕を組んだまま、空を見上げる。
「石塚くんがトイレに立った隙にでも、こっそり調べればいいじゃないか。
 それが後ろめたくて嫌だっていうなら、渡部さんに“同調”してもらえば一発だ。嘘発見器みたいに使って申し訳ないけどね」
小沢は何も言えずに下を向いていた。いたたまれなくなった井戸田が助け舟を出す。
「でも、まだ石塚さんがそうって決まったわけでもないのに、渡部さんまで巻きこむのはどうかと思って……
 小沢も気が動転してたんです、とても信じられない話だから」
「違ったら違ったでいいじゃないか。それとも、疑う事自体が悪だというのか?
 ……いつから、白はそんな及び腰になったんだ」
石井は深いため息をついて、後頭部をカリカリと掻いた。
「いずれにせよ、今は静観したほうがいいんじゃないのか。万に一つ石塚くんが本当に黒だとして、
 僕を欺けるような器用な子じゃない。そのうち向こうから答えを教えてくれるだろう」
子、と表現したところに、石井が相方に抱くイメージがあるようで、井戸田は思わずぷっと吹き出していた。
「何がおかしい!……とにかく、石塚くんはまだ記憶も戻ってないし、石も持ってない。……本人が言う限りだから、
 嘘か本当か確かめようはないけどね。さっきの方向で頼むよ」
石井は柵から体を離して、出口に向かって歩いて行く。鍵がかかっているのを忘れてドアノブを回したせいで、
ガチャッと金属のぶつかり合う音がした。
「……僕としたことが」
口の中で小さくつぶやき、今度こそ鍵を開けて屋上から出て行く。石井の足音が聞こえなくなると、二人はどちらからともなく顔を見合わせ、
お互いの思考の混乱をまとめようと並んで立って夜景を見た。
「潤はどう思う?」
「……相方可愛さに目が曇るってのはどうなのかな」
「じゃあ、やっぱり石塚さんは黒だと思う?」
「ただし、本人の意志じゃないパターンだな」
小沢は何も言い返せず、黙って風を浴びていた。
「“フードがついた、デカめの黒いサマーコート”……今日も着てた。あの人今日、足引きずってんの気づいた?」
「あ、そういえば……左足が全然動いてなかったね」
「あれ、深沢さんに転ばされた所為で捻挫した、って考えたらどうだよ。黒にも治せる奴はいるだろうけど、
 深沢さんを治すのが手一杯で、治せなかったんだ」
「……やっぱり、黒なの?」
「黒なんだよ」
柵を握りしめる井戸田の手に、さらに力がこもる。手の甲にぴくっと筋が浮き上がった。


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