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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
829
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/11/15(日) 22:57:35
「俺は大阪やし、事務所もちゃうけど、お前の手助けにはなれると思う。俺みたいな想いは誰にもして欲しくないから。
もし、お前が黒から本気で逃げ出したいって思うんやったら……」
いつの間にか、距離は一メートル弱にまで縮まっていた。浅越は足を止めて、最後の言葉を放つ。
「顔、見せてくれ」
わずかな、静寂。男__石塚は震える手をフードにかけて……そのままの体勢で、止まった。
「……もっと早く、会えてたら」
つぶやきの意味を問う前に、引き金にかかった指が動く。パンッと軽い衝撃音が響いた。同時に肩のあたりを襲う熱。
「うっ」
えぐりとられるような痛みに、肩を抑えてその場にうずくまる。指の間からぬるりと血が流れた。骨が軋む感覚と共に、
肩から指先に至るまでの範囲がびりびりと電流を流したみたいに痺れていく。
「くっ……゛い、つぅ……!」
肩の傷口を手で抑えたまま、傷を癒やす。やわらかな光が広がり、痛覚が徐々に遠ざかっていく。
いくら治せると言っても痛みを感じないわけではない。脂汗をぬぐいながら立ち上がると、すぐ目の前に銃口があった。
見下される体勢になったおかげで、フードに隠れていた顔が見えたが、真っ黒い影がかかって顔立ちまでは分からない。
「お前……」
もう一発、銃声が響いた。腹筋に叩きこまれた光の弾は、浅越の呼吸を一瞬せき止める。
「かはっ……!ゲホ、げほっ……う、ぅ……」
地面に倒れて激しく咳き込む浅越の胸ポケットから、天青石のストラップがついたケータイが抜き取られる。
青い結晶が徐々に黒く染められていく。終わると、石塚はケータイをそっと浅越の手に握らせた。
石塚が壁に手をつくと、行き止まりを作っていた建物の壁が、テレビ画面にノイズが雑じるようにぶれて消えて行く。
「浅越!」
吉田の一閃を分厚い脂肪のおかげでなんとか退けた小杉が、倒れている浅越に駆け寄ってくる。
そこで浅越のそばに立っている石塚に気づき、みるみるうちに額に血管が浮き上がった。
「お前……そうか、お前ら最初から浅越狙いか」
怒りをにじませた小杉の声音に、石塚はまたびくっと怯えて後ずさる。
「顔も見せんで騙し討か。卑怯な戦法やな」
卑怯、の一言は、氷のように石塚の心臓に突き刺さった。この状況を表すにはたしかに的確な一言。
石塚はぎゅっと拳を握りしめて、またゆっくりと開いた。心のどこかで黒の欠片が、自分の声を真似て囁く声がする。
『お前に何が分かんだよ、運がよかっただけのくせに』『正義ぶりやがって、ヒーロー気取りか』『黙れハゲ』
『その髪の毛引きちぎられてえのか』『跪け』『つまんねー説教する気かこいつ』『他にやることねえのかよ、サミシー奴らだな』
頭を振って、幾重にも響く声を黙らせた。
「……そっか、そうだね」
あっさり肯定されたのが意外だったのか、今度は小杉のほうが驚く。その後ろで阿部が「あまり喋らないで」と首を横に振るのが見えたが、
このまま終わるのは何となく後味が悪かった。吉田は剣を下ろして地面に突き立て様子をうかがっている。
「お前、やっぱり」
「やっぱり、何?」
「黒なんか……居心地よくないんやろ、ほんまはお前、こんな事したないんやろ!
なあ、お前の名前教えろや、お前が誰か分かったら、俺の石で迷いを取り除けるから」
「はあ?」
思わずフードを脱ぎたくなったが、それだけはこらえる。心の中の黒と白の天秤が、バランスを失って一気に黒に振りきれた。
ポケットの中のプラチナルチルの光が、どんどん弱まっていく。石塚は思わず笑い出していた。
「小杉、お前さあ。何言い出すかと思えば、いい年こいて正義のヒーローごっこ?
“ほんまはお前、こんな事したないんやろ!”……あはははっ、ははっ……マジ腹痛い!」
比喩ではなく、腹を抱えて笑う。突然雰囲気が変わった敵に、ブラマヨの二人はどうすればいいのか分からず顔を見合わせる。
「それが何?」
笑いを止めて、逆に石塚のほうが問いかける。右手の銃口は、今度はブラマヨの方に向けて照準を合わせた。
「俺を助けようって思ってる?逆に俺はさ、お前らなんかぶっちゃけどうでもいいんだよね。仲良くもないし。
……だから、俺とおしゃべりする前に浅越さんなんとかしたら?」
「こいつっ……!!」
ついに、小杉の沸点が切れた。しかし、怒りのまま殴りかかろうとした小杉の足元を、何かが通りすぎる。
「お、おっ!?」
足がもつれてすてーんと転んだ小杉を、電柱の陰から走り出た男が助け起こす。
「大丈夫か!」
「……う、誰や!また黒の援軍……って、まさか」
顔から地面にぶっ倒れたせいで赤くなった鼻をおさえて、小杉は立ち上がった。
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