したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

822Evie ◆XksB4AwhxU:2015/11/07(土) 19:16:06
『人間の心っていうのは、常に二重構造になってる。嫌よ嫌よも好きのうちって言うだろ。
 どんなに優しいとか、いい人だって言われている奴でも、心のどこかに闇がある。
 そうだよ石塚、お前のことだよ。お前の中にだってあるはずなんだ。深く果てしない、闇が……』
あたりを見回しても、設楽の姿は見えない。声だけが意志を持ったように反響してくる。
『お前だって、一度は石井を憎んだことがあるんじゃないの?どうして自分だけ、って……いつも石井の
 影で、石井の背中ばかり見ている。そんな自分が嫌になったことがさ。
 闇を恐れちゃいけない。それを受け入れるんだ。その手助けを、俺がしてあげるから』
耳を塞いで、その場にうずくまる。その間も設楽の声は止まらない。
「やめろ!」
『でも、石井はお前を信頼している。それが苦しくてしかたないんでしょ?自分の中にある汚い感情を
 見られたくないんだ。でもその所為で、お前は嘘をついた』
「……まさか」
『俺はなんでも知ってるんだよ。石井が記憶を取り戻したことも、お前が石井を苦しめたくなくて嘘ついたことも。
 でもさ、気づかない?嘘をついた時点でお前はもう、石井を裏切ってるってこと』
「黙れ、黙れよ!!」

叫んだ途端、目の前が急に明るくなった。何かに締めつけられていたような感覚が解けて、呼吸が楽になる。
「……まぐれっていうのは、二度目はないんだよ」
設楽はソーダライトを指でなぞると、忌々しげに口を開きかけた。
「やめろ、設楽」
意外にも、土田から助け舟が出た。設楽の二の腕を掴んで、石の発動を止めるよう目で合図する。
「深追いは禁物だ。連続での説得は、精神に悪影響を及ぼす危険性がある。
 ……こいつは、石井を守るって点では迷いがないんだ。焦らずじっくりと、欠片を使って従わせたほうがいい」
後半の言葉は、設楽の耳元で囁かれたせいで石塚には聞こえなかった。小林も、開きっぱなしのノートと
設楽を見くらべて、ほっと安心したようなため息をつく。
「そうだね。小さなことから一つずつ、確実に……摘み取っていかないとね」
設楽は納得したのか、不穏な言葉と共にソーダライトをポケットにしまった。
代わりに取り出したのは、鋭角で構成された黒い鉱石の欠片。石塚の手がまたかすかに震えだすと、満足気に鼻を鳴らす。
指先でピンッと黒の欠片が弾かれる。畳の上に、黒の欠片が転がった。

「ご褒美。拾いなよ」

その言葉に、石塚は惨めな気分で欠片をつまみ上げる。手の中にそっと握りこんだまま、設楽を見た。
「ねえ、自分で拾って飲むってことはさ。黒ユニットに従ってくれるってことでいいんだよね?」
設楽は石塚の肩をポンポンと叩いた。これを飲まなければ、あの苦痛を味わい続けることになる。
だが、一時楽になる代わりに得られるのは、完全なる服従__。
「約束するよ。お前が黒のために働いてくれる限り、石井に手出しはしない。俺達は、運命共同体だ」
そう囁いた設楽の指に力がこもる。石塚は震える手で欠片を口に入れると、喉を鳴らして飲みこんだ。
心臓のあたりがすうっと冷えていく。小刻みに震えていた手を見つめる。すっかり震えはおさまって、体が軽くなっていた。
「ようこそ、黒ユニットへ!」
設楽の耳障りな笑い声が、不気味なほど静かな座敷に響き渡った。

◆◆◆◆◆◆◆◆

あの悪夢のような集会から一夜明けた昼。石塚は自宅のテーブルの上で作業をしていた。
「えーと、こっちのネジは……プラスドライバーで行けるかな?」
ネジを回して部品を外していく。けして不器用ではないと自負しているが、工作など小学生の時以来だ。
完全に補助に特化した自分の石では、相手の隙を作るか誘いこむ事しか出来ない。やはりどうあがいても
この熔錬水晶を使って撃つしかないのだが、指にはめると(錯覚かもしれないが)指が食いちぎられそうに痛む。
かといって指でつまんで撃つのも危なっかしい。となったところで石塚はひらめいた。

(モデルガンの中にこれを入れたら、撃てるんじゃねえの?)

部品の正体は、秋葉原で午前中のうちに買ってきたモデルガンだ。店員はこちらが初心者と分かると、銃に関するウンチクを、
上田のごとく盛大にしゃべりまくったが、使えさえすればそれでいいと思っていたので、聞いていなかった。
「あ、ここが弾倉か。じゃあ……ここに、入れれば……よし、入った」
銃身を開いて、中に熔錬水晶の指輪を入れて固定する。サイズを測ったのがよかったのか、ぴったりだった。
しかし素人仕事が災いしたのか、ハンドガンの形に戻せたのは日が暮れてからだった……


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板