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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
819
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/11/07(土) 19:14:12
しかし、石塚からは黒の芸人特有の禍々しさはあまり感じられない。まだ仲間になって日が浅いのか、黒ユニットのやり方にも
慣れていないようだ。石塚が足早に立ち去った後も、深沢はしばらく立ち上がれなかった。額に手を当てて、低く呻く。
「……だめだ、あいつは黒になんか入れちゃいけない。……なんとかしてやらないと」
深沢は立ち上がり、ズボンについた砂埃をはらう。それから、まずは救急車を呼ぼうと公園の電話ボックスに走る。
「もしもし……はい、救急です」
手短に通話を終えると、受話器を戻す。がちゃんとやけに大きな音がして、年甲斐もなく心臓が跳ねた。
狭い電話ボックスを出ると、ため息をついて髪をかきあげる。東にも知らせたほうがいいかと考えたが、
東もあれでなかなか、すぐに熱くなる江戸っ子気質の持ち主だ。逆上してますます状況を悪化させかねない。
「あー、なんで俺がこんな悩まなきゃいけねえんだよ!」
深沢は、次々に浮かぶ苦悩の種を振り払うように髪をかきむしった。
(逆に黒ユニットを利用してやるような、したたかな奴なら心配なかったんだけどな……
石塚の性格じゃ、気づいたら泥沼にはまっちまうのがオチだ)
ベンチに座って考える。救急車のサイレンが近づいてきて、公園の近くで止まった。中から救急隊員がばらばらと降りてきて、
路地に倒れた男を担架に乗せている。深沢は背もたれに体を預けて空を見上げると、降って湧いた厄介事にため息をついた。
「さて、これからどうしようか……」
橙色の夕暮れは、いつの間にか雨雲が浮かぶ仄暗い青に変わっていた。
翌朝。疲労のあまり、帰りつくなりベッドに倒れこんで寝ていた石塚は、
薬指の皮膚に、歯を立てられているような鋭い痛みを感じて目を覚ました。頭も痛い。おまけにまた手が小刻みに震えている。
おまけに昨日殴られた頬が腫れて熱をもっている。氷袋を当てて冷やすが、黒ユニットに労災があるのかどうかが気になった。
『それで今日一日は保つだろ』
大竹の言葉が思い出された。あんな少量の欠片を飲むのでもあんなに苦労したのに、一体どれだけ飲めばこの症状は治まるのか。
考えるだけで憂鬱な気分だ。そういえば、稽古場にコートを忘れてきた。
「もしかして、毎日飲まなきゃダメとか?……嫌だなあ」
通話履歴を確認するが、設楽からの着信はない。一応命令どおりに石は奪ってきたが、なんのアクションもないというのは
逆に不気味で恐ろしいような気もする。そこまで考えたところで、薬指の痛みが再び盛り返してきた。
「いって……何なんだよこれ、呪いの指輪かよ!」
起き上がって外そうとするが、なぜかがっちりと喰いこんで離れない。しまいには無理矢理ねじるようにして外す。
床に転がった指輪をテーブルに置くと、そこでケータイが鳴った。耳に当てると、かすかな引き笑いが聞こえる。
『よお石塚、そろそろ限界か?』
「……大竹さん」
『設楽から伝言だ。“明後日、黒ユニットの集会が開かれるから、地図の場所に来ること。あ、そうだ。
今はたまたま黒の欠片のストックがないから、あと二日間頑張ってね”……だそうだ』
設楽の語り口を流暢に真似しながら伝えてくる。たまたまない、というのが嘘なのは石塚にも分かった。
ぎりぎりまで焦らして、堕ちてくるのを待っている。残酷なやり口だ。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!じゃあ俺あと二日もこんな……」
『じゃあ、俺は忙しいから切るぞ。また明後日な』
「大竹さん!」
叫びも虚しく、通話は切られた。ケータイを放って、またベッドに倒れこむ。気休めと分かってはいるが、
頭痛薬を水なしで噛み砕く。まるで夢と現実を行き来しているような、ふわふわした感覚。
ちょっとでも気を抜くと、どす黒い思考に引っぱられそうになるのを、爪を噛んでこらえる。
「……怖いよ、石井さん」
石塚は体をぎゅっと丸めて、やり過ごすために目を閉じた。
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