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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

818Evie ◆XksB4AwhxU:2015/11/07(土) 19:13:45
(やばい、このままじゃいずれ直撃だ。
 ……弾切れまで待つってのもアリだけど、どうせストックあるんだろうしな……)
石塚は電柱の影に隠れて、苦手な思案を巡らせる。ふと、右手の指先からぽた、ぽたとこぼれ落ちる鮮血が目に入った。
胸に手を当てて、激しく脈打つ心臓を抑える。何回か深呼吸すると、覚悟が決まった。
「おい、逃げてんじゃねえぞ!」
男はすっかり勝利を確信したらしく、強気に煽った。言われた通り電柱の影から石塚が出てくると、にんまり笑う。
石塚が歩き出すのと同時に、男もコーヒー缶を振るった。残り少ない中身が全てパーカーの前身頃にかかる。
「ピッ」と鋭い指笛が鳴る。しかし、青い放射光は出なかった。
「なんだと!?」
男が驚きの声をあげる。同時に、銃声に似た音が響いた。
ほぼゼロ距離からの弾丸が、男の腹に深くめりこむ。あまりの圧迫感に、男は呼吸もできず立ち尽くした。
石塚の指がゆっくりと下ろされると、腹を抑えて短く息を吐く。
「ぅ、ぐ……」
服にじわりと血が滲んで、内部から痛みが波のように押しよせる。
石塚は地面に倒れこんだ男のジャケットを探った。案の定、胸ポケットからブレスレットに加工された宝石が出てくる。
立ち上がると、「待……て……」と弱々しい声が引き止めた。
「お前……なんで……何を、仕込んでやがった……」
石塚は無言で、着ているパーカーを指さした。点々とついた染みは、夕暮れの薄暗い光に慣れた目に、ゆっくりと本来の色を教えた。
「……はっ、そういうことかよ」
ぱっくり裂けた右手の傷口とその赤い染みを見くらべて、男は自嘲気味に笑った。
男の笑いは、石塚の姿が路地の向こうに消えた後も、しばらく止む事はなかった。


収録終わりでいい気分だったので、夕暮れを見ながら散歩して帰ろうと思ったのがよくなかった。
のんびり歩いているうちに、空気にただならぬ気配が混ざる。それは、つい5、6年前まで当たり前に感じていた……そして
最近ふたたび感じるようになった気配。黒ユニットの人力舎白掃討作戦が失敗したのは聞いていたが、それにしても
この頃の黒はまたなりふり構わないようになった。
「……ここからが本番、ってか?」
第六感が激しく打ち鳴らしていた警告を無視して、深沢は走りだした。中年を間近に控えた体に全力疾走はいささかきついが、
構わず走り続ける。すると、人気のない路地裏から断続的な爆発音が聞こえてきた。
爆発で舞い上がったコンクリート片からとっさに顔を庇うと、パンッと乾いた音が響き渡る。
恐る恐る顔を上げると、金髪の男が地面に倒れていた。もう一人……フードを目深にかぶった男が、倒れた体を乗り越えて
こちらに歩いてくる。あわてて公園に入ると、草むらに隠れて男の顔をうかがった。
パーカーの男は、奪った石をポケットに入れて、あたりをきょろきょろと落ち着きなく見回した。
やがて人の気配がないのを確認した男は、フードに手をかけ一気に脱ぐ。
「……ッ!?」
深沢は驚きのあまり、息を呑んだ。
フードの下から現れたのは、自分もよく知っている……いや、だからこそ最も『黒』だと信じられない人間だった。
「石塚?」
呟きはほとんど吐息となって、消えていく。
むしろ相方の石井の方が、いまいち腹の中が読めない部分があり、黒だと言われてもあまり違和感がないように思える。
普段は冷静で知的な雰囲気の男。ドラマでも同じような役どころの多い石井だが、自分で書いたコントの登場人物になると、
たまに、お芝居だと分かっているこちらでもぎょっとするような狂気を放つ事があるからだ。
(やっぱり、あの合理的な石井が黒に与するってのは考えにくい。
 それに、アリキリの二人とも黒だっていうなら、石井が一緒にいないのはもっとおかしい。
 つまり……石塚の方だけが……一番ありえないパターンじゃねえか)


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