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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
812
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/11/02(月) 20:50:25
◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日。
石井は約束の時間よりかなり早く稽古場に現れた。おはようございます、と遠くから叫ぶ後輩に挨拶を返して、
ネタ合わせのために持ってきた台本をテーブルの上に広げ、椅子に座って相方を待ち構える。
「ねえ、石塚くんまだ来てない?」
遠くで練習していた岡安に向かって叫ぶと、喉を無駄に消耗しないためか両手でバツ印を作って首を振った。
約束の時間までまだ30分近くあるのだから、来ていなくてもなんら不思議はないのだが、昨日からどうも胸騒ぎがする。
電話してみようかと思った時、稽古場のドアがそっと開いた。石塚は普段通りに明るく挨拶をして、相方の所へ来た。
「おはよ、石井さん」
「おはよう、どこか具合が悪いのか?」
「なんで?」
「……声がかすれてるし、いつもより半音低い。寝癖ついてる。顔色も悪い。僕は案外君を観察してるんだ」
順番に指摘していくと、石塚は喉に手を当ててふっと笑った。
「ごめん、実はちょっと風邪気味でさ」
「やっぱりか。じゃあ今日は早めに終わらせて帰ろう。しっかり治したほうがいい」
「うん……ありがと、石井さん」
石井は立ち上がると、気にするなというように石塚の背中を軽く叩いた。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
「ああ」
コートを脱いで椅子にかける。稽古場を出る寸前、石井をもう一度振り返った。いつもどおり姿勢よく座って、
台本に線を引いている。石塚は顔を背けて、足早にその場を立ち去った。
男子トイレの手洗い場。冷たい水でバシャバシャと顔を洗って、鏡を見る。石井に指摘された時、
少し体がこわばったが、上手く誤魔化せたようでホッとした。
「……これでいいんだ」
袖に隠していた左手の薬指。外そうと指をかけた瞬間、嘔吐感がこみあげた。
「うっ」
個室に駆けこんで膝をつき、便器の台座を上げる。しかし、吐きそうで吐けない、気持ち悪さだけが胸に広がる。
しばらくすると吐き気はおさまったが、代わりに手が細かく震えていることに気づいた。
「風邪じゃ手は震えねえよな」
肩越しに聞こえた声。振り返ろうとした体を押さえつけられ、便器の方へ追いやられる。
「ちょっ、何す……」
大竹は後ろ手に鍵を閉めると、黙れ、と口だけを動かして石塚の口を右手で塞いだ。
抵抗しようと手を振り上げると同時にドアが開く音。男にしてはやや軽い足音が、手洗い場のところで止まった。
「石塚くん、いないのか?」
おかしいな、一階の方に行ったのかなと呟く声。石井は男性用小便器の並んだ前を通りすぎて、個室のドアを
コンコンと二回叩いた。大竹が左手で叩き返すと、「石塚くん?」と聞き返してくる。
「俺だ、俺」
「ああ、大竹さんでしたか」
「おう。どうかしたか?」
答える間も石塚の口に当てた手は離さない。
「いえ……何でもありません」
「そっか、じゃあ俺そろそろ出っから、どいてくれるか?」
「いえ。失礼します」
石井が出て行くと、やっと大竹の手が離れた。呼吸を整えながら、まだ震えの止まらない手でフタをおろしてその上に腰かける。
恨みがましい目で見上げると、大竹はなんでもないような顔で腕を組む。
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